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今日のアフリカ

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チセケディ政権の外交と内政

2025/03/09/Sun

 東部紛争をめぐってコンゴ民主共和国とルワンダの関係が緊張する中で、チセケディ政権は欧米に対する外交的働きかけを強めている。8日付ファイナンシャルタイムズによれば、先月末コンゴの上院議員がルビオ国務長官に書簡を送り、コンゴ軍への支援と引き換えに、米企業に鉱物資源採掘権を供与する提案を行った。米国側は、この協議を開始すると報じられている。

 コンゴには銅、コバルト、リチウムなど重要な鉱物資源が豊富に埋蔵されているが、その採掘権のほとんどは中国系企業が握っている。書簡では、コンゴ国軍兵士の訓練や武器・装備品の供与と引き換えに、採掘権を米企業に与えることが提案されている。

 欧米の支持をルワンダから自国に変えるために、チセケディ政権は様々な訴えかけを行ってきた。その成果もあって、2月以降、米国はルワンダに制裁を科し、英国やドイツがルワンダへの援助停止を表明した。2月21日には、国連安保理が初めてルワンダを名指しで非難した。チセケディ政権の外交政策は、この点で成果を挙げている。]

 一方で、内政は危うい。チセケディの孤立が深まっている。2月、彼は主要野党指導者に向けて大同団結を呼びかけたものの、モイズ・カトゥンビやマルタン・ファユルなどはこれを拒否した。南アフリカに居住している前大統領ジョゼフ・カビラも、チセケディ政権への批判を強めている。カトリック教会関係者は、チセケディの方針に反して、M23を含む東部コンゴの武装勢力と広く対話するよう訴えている(2月28日付ルモンド)。

 また、元UDPS(与党)暫定議長の要職にあったカブンド(Jean-Marc Kabund)が、2月27日付Jeune Afrique誌に掲載されたインタビューで、チセケディを厳しく批判している。与党内部も分裂しているのだ。

 トランプ政権の実利指向を考えれば、鉱物資源をめぐるディールに応じてコンゴ軍に武器を供与するかもしれない。しかし、それがどの程度東部コンゴの戦況を変えるかは別問題である。(武内進一)

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