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今日のアフリカ

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フランスが西サハラ政策を転換

2024/08/03/Sat

 7月30日、フランスのマクロン大統領はモロッコ国王モハメド6世に書簡を送り、西サハラに対するモロッコの主権を事実上認めた。従来の立場からの政策転換である。書簡の中でマクロンは、モロッコが2007年に提案した、モロッコの主権の下で西サハラの自治を認める構想が「国連安保理の決議に沿った公正、持続的、交渉しうる解決に至る唯一の基盤だ」と表明した。
 これは突然の政策転換ではない。米国スペインが西サハラに対するモロッコの主権を認める立場に転じており、フランスのセジュルネ外相が2月にモロッコを訪問した際も、モロッコの立場に配慮した発言を行っていた。フランス外務省内で準備が進められていたとルモンド紙は報じている(7月30日付)。
 これに対して、ポリサリオ戦線は厳しく非難し、ポリサリオ戦線の庇護国アルジェリアは駐仏大使を召還する措置をとった。アルジェリアの措置に対してフランスは、主権国家の決定であり、コメントはないと表明している。 
 西サハラ問題では国連の場における調停・対話が機能せず、アフリカをめぐる外交に刺さった大きなトゲになっている。欧米諸国はモロッコの主権を認める方向に傾いているが、アルジェリアがポリサリオ戦線の主権を確立する立場を変える見込みはない。昨今の国際情勢の中でパレスチナ問題と連動し、ポリサリオ戦線に同情的なアフリカ諸国が立場を変えることもないだろう。
(武内進一)
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