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今日のアフリカ

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ODAと自国企業の利益

2026/03/22/Sun

 3月16日付ルモンド紙に、フランスの援助政策に関する共同意見が掲載された。元世界銀行幹部、議員、大学教授など11名によるもので、援助政策の転換を求めている。興味深い内容なので、以下紹介する。

 グローバルな競争が強まるなか、ODAは自国企業を支える正当な道具である。これまでODAはしばしば、遠く離れた地域で何をやっているのかわからず、無駄だと批判されてきた。つまり、そこから利益を得るのは外国だけだと見なされてきた。

 ODAの一義的なミッションは、貧困削減にある。この考え方は、倫理的な問いに対応するだけでなく、明確な利益にも答えるものだ。急速に人口が増加するアフリカのような地域が経済発展に失敗すれば、統御できないリスクに晒される。一方、ODAはフランスの影響力にとって核心的な道具である。アフリカにおけるフランスの影響力は、大いにこの道具と結びついている。フランスの影響力低下を嘆きながら、ODAの削減を要求するのは矛盾している。

 財政的制約があるのは確かだ。単にばらまくのではなく、本当に必要なところに集中すべきだ。それはまず、サヘルである。サヘルは、フランスが責任を果たすべき歴史的地域だ。広義の地中海地域やインド・太平洋地域では、フランスは中国に対する信頼できる代替策を提供すべきだ。その他の地域への提供は、もっと軽くてよい。

 ODAの提供にあたっては、民間資金の動員という観点を重視すべきだ。公的資金を触媒にして、インパクトを最大化すべきだ。このテコの原理を作用させるために、支援の結果に対する厳密な評価が必要になる。

 これまでフランスは、ODAとプロジェクト・ファイナンスを結びつけることを、倫理的観点から逡巡してきた。国際的競争が強まるなか、この逡巡は美徳ではなくハンディキャップだ。ODAをわが国企業支援の道具とすることは、正当で、戦略的で、必要だ。パートナー国にも、わが国企業にも利益になり、世界におけるフランスの位置取りに不可欠だ。

 以上が共同意見の概略である。トランプ政権下の米国だけでなく、フランスなど欧州諸国でもODAを削減する動きが顕著になっている。そうしたなかでこの共同意見は、援助を単に削減するのではなく、対象を絞り、自国企業に資する形で戦略的に利用することを求めている。

 この議論が興味深いのは、日本の経験を彷彿とさせるからである。日本はもともと自国企業を利する形でODAを利用してきたが、高度成長期にヨーロッパ諸国から批判を受け、「ひも付き援助」の削減に取り組んだ。しかし、近年では経済界の要請を背景に、それをまた復活させる動きがある。上の議論は、日本の動きを後追いしているようにも聞こえる。「選択と集中」を謳うところも既視感があるが、サヘルが最初に来るところは面白い。

 今後、援助のビジネス化は世界的な潮流となるのだろう。そこでは「ビジネスと人権」の観点からの関与がいっそう必要となる一方、平和構築のようにビジネスが対応しにくい分野に関する議論が不可避になる。ビジネスの観点からサヘルにどう対応するのかは、それが可能かどうかを含めて、日本にとっても大いに参考になろう。(武内進一)

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