1月9日、西アフリカ経済共同体(ECOWAS)首脳は、マリに対する制裁強化を発表した。2度にわたるクーデタを受けてECOWASは早期の選挙実施を求めていたが、移行期間を5年間とする案がマリ側から示され、ECOWAS首脳から怒りの声が上がっていた。制裁によって、マリに対する陸路、空路の封鎖、生活必需品を除く商取引の全面停止、銀行資産の凍結などが実施されることとなった。この制裁措置に対して、フランスや米国は支持を表明した。
ECOWASの制裁に対して、マリ国内では反発が広がっている。14日には首都バマコなど複数の都市でデモが実行され、政権に対する支持と制裁への反対を訴えた。フランスなど外部勢力への反発の声も頻繁に聞かれる(BBC Africa Today)。
マリに関しては、昨年来、ロシアの民間軍事企業Wagner(ワグネル)が展開しているとの指摘が繰り返されてきた。昨年末12月23日には、フランスと14のヨーロッパ諸国、そしてカナダがマリにおけるワグネルの展開を非難する共同声明を発表した。一方マリ政府は、同国内にワグネルは存在しない、ロシアとの二国間軍事協定に基づくロシア兵の展開だと主張している。
国際社会がマリの状況を懸念して圧力を加えることによって、マリ国内では軍事政権への支持が高まり、国際社会とりわけフランスへの反発を強める結果を生んでいる。
14日付ルモンドに掲載された、International Crisis Groupのヤハヤ(Ibrahim Yahaya)研究員のインタビューには、マリ情勢に関して興味深い指摘が見られるので紹介する。第1に、ECOWASの制裁は経済的には重大な影響があり、周辺国にも影響が及ぶだろう。しかし、政治的効果は不透明である。第2に、ワグネルに関して、軍事的なアプローチの限界はかねてから指摘されており、ロシア勢力の導入が事態を改善する可能性は薄い。第3に、反仏感情について、SNSを通じた情報操作が指摘されるが、その根は反植民地感情やこれまで繰り返されてきた介入への反発にあり、SNSはそれを増幅しているだけである。
混乱を深めている状況だからこそ、落ち着いて事態を分析したい。