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今日のアフリカ

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新型コロナウイルス感染症対策に関する大規模調査報告

2020/05/07/Thu

 5日、アフリカ20か国28都市で約2万人へのインタビュー調査をもとにした、新型コロナウイルス感染症対策に関する報告書 "Responding to Covid-19 in Africa: Using data to find a balance"が公開された。国際保健機関(Africa CDC、WHO)、民間企業(Ipsos, 世界経済フォーラム)、そして研究機関(UK Public Health Rapid Support Team)等から構成されるコンソーシアム「PERC」(Partnership for Evidence-Based Response to Covid-19 )によるもので、市場調査の手法を用いて3月下旬から4月にかけて実施した調査に基づいている。新型コロナウイルス感染症対策に関して、アフリカ全体を対象とした大規模なインタビュー調査に基づく報告書として、貴重なものである。
 報告書は、各国が採用した公衆衛生・社会行動措置(Public health and social mesures:PHSM)に関する評価になっている。PHSMは新型コロナウイルス感染症拡大防止のための一連の措置を指し、握手を避ける、マスクを着用する、集会を禁止する、自宅待機をする、といった様々な措置が含まれる。これについて報告書は、ローカルコンテキストを考慮しなければ逆効果になると警告している。PHSMは確実に感染症拡大を抑える効果があるが、一方で経済的苦境、食糧難、暴力などの副作用を伴う危険があり、感染症抑止の利益を損ないかねないとして、一律の適用に警鐘を鳴らしている。
 報告書に掲載されている、様々なPHSMについての意識調査が興味深い。平均で見ると、「握手やキスを避けること」への反対は5%しかないが、「感染者に回復するまで自宅で過ごすことを求める」への反対は20%に達している。「礼拝の集会禁止」への反対は17%だが、「都市の公共交通機関停止」には29%、「市場の閉鎖」には30%が反対している。一方で、政府の新型コロナウイルス感染症対策に対しては、総じて支持率が高く、6割から8割以上がこれを支持している。
 報告書では、PHSMが貧困層にとっては「感染するか、飢えるか」の選択になってしまうことを警告している。自宅に留まることの障壁は、貧困層にとってとりわけ大きい。報告書が強調するように、地域の実情に即した対策を講じることが必要だ。