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今日のアフリカ

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アフリカCDCでの米中対立

2020/04/19/Sun

 14日にトランプ政権が発表したWHOへの資金拠出停止措置に見られるように、米中対立は新型コロナウィルス感染症をめぐる国際協調を様々な面で阻害している。アフリカの国際保健医療に関しては、WHOの他にアフリカCDC(The Africa Centres for Disease Control and Prevention)が重要な役割を果たしているが、こちらも米中対立の影響を受けている。16日付アフリカ・コンフィデンシャル誌は、両者の関係や最近の動向に関する記事を掲載している。
 アフリカにおけるWHOの活動については、ブラザヴィルに設置された地域オフィス(Africa Regional Office. WHO-ARO)が重要な権限が与えられている。WHO-AROは自律性が高く、特定疾病の対策プログラムを立てようとすれば、ジュネーブの本部ではなくブラザヴィルのAROを通じて話を進める必要がある。エボラ出血熱が西アフリカで医療危機をもたらした2014年以前、AROは特にその透明性に関して批判を受けており、ドナーの支援が集まらなかった。今日、ボツワナ人のモエティ(Matshidiso Moeti)地域ディレクターの下、AROは透明性を高め、国際的な好評価を得ている。とはいえ、トランプ政権による資金出資停止声明以前から慢性的な資金不足に苦しみ、コロナ危機に際しても十分な活動ができていない。
 アフリカCDCは、2016年1月のAU首脳会議で設立が決まり、2017年から活動を開始したAUの特別機関である。加盟国の医療支援と能力形成が主たる業務である。アフリカ諸国は5つの地域に分かれ、ガボン(中部)、ケニア(東部)、エジプト(北部)、ザンビア(南部)、ナイジェリア(西部)がそれぞれのホスト国となっている。AU各国に加えて、世銀、米国、日本、中国などが資金出資をしている。米国はその設立当初1400万ドルを出資し、その後も医師の給与などを支払い続けてきた。設立は新しいものの、AUや有力ドナーの支援により、急速に存在感を増してきた組織である。ジャック・マーがいち早く表明した支援も、WHO-AROではなく、アフリカCDCに向かった。
 ただし、アフリカCDCもまた、米中対立の余波を受けている。2月、中国が8000万ドルを提供すると申し出たところ、米国が反発。「アフリカはゲノムデータの宝庫であり、中国はCDC建設によって、他のCDCからデータを盗もうとしている」ととして、アフリカCDCが中国の資金を受け入れるなら米国は資金拠出を削減し、アトランタのCDCから出向させているスタッフを引き揚げると通告した(2月6日付ファイナンシャルタイムズ)。
 米国に対しては、貧困層への安価な医薬品提供よりも、自国企業の知的所有権を優先するようWHOに圧力をかけてきたとの批判がある。一方、これまでの中国の行動に、米国やその他の国々を懸念させる点があったことも否定できない。国際機関は国益が衝突する場になりがちだが、危機の時代にあって、それがいっそう際立つようになっている。