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今日のアフリカ

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ワグネルの再編―ロシアの「アフリカ部隊」

2023/12/18/Mon

 去る8月プリゴジンが飛行機墜落で不慮の死を遂げてから、アフリカにおけるワグネルの活動がどうなるか、様々な憶測を呼んできた。15日付ルモンド紙は、ロシアが「アフリカ部隊」(Africa Corps)という名称でアフリカにおける軍事作戦の再編を試みていると報じた。
 「アフリカ部隊」の名称は、ロシア国防省に近い軍事筋のブロガーが11月20日にTelegramに投稿して以降、使われるようになったと言われる。その背景には、エフクロフ(Iounous-bek Evkourov)国防次官の動きがあり、同次官は8月22-24日(プリゴジン墜落死と符合)、9月17日にリビア東部のベンガジを訪問し、ハフタル将軍と面会している。また、12月2日にはまたもベンガジを訪問し、その足でマリ、ブルキナファソ、ニジェールも訪れている。エフクロフは、ワグネルをロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)に組み込んで再編するようプーチンから命を受けているとされ、その動静が注目を浴びている。
 米国政府筋は、この「アフリカ部隊」がワグネルの活動や人員を引き継ぐと見ている。ただし、再編が順調に進んでいるわけではなさそうだ。ロシア国防省はワグネルの元戦闘員をアフリカでの作戦にリクルートしようとしたが、総じてうまく行かなかった。Telegramには、アフリカでの給与やボーナスに言及して新兵募集の知らせが投稿されており、新兵のリクルートには苦労していると見られる。
 マリでは、2021年末以来ワグネルが活動を行い、1500~2500人が現在活動しているとみられる。中央アフリカの活動も、同程度の歴史がある。一方、ブルキナファソとニジェールでの活動展開は、これからのようだ。マリ、ブルキナファソ、ニジェールの三国で立ち上げた「サヘル諸国同盟」(AES)は、ロシアとの協力枠組みとして機能することが想定されている。
 ロシアの対アフリカ展開は、プリゴジンの死後、第二局面に入った。その動きは決してスムーズとは言えないものの、サヘルの三国、リビア、中央アフリカ、そしてスーダン東部(ダルフール)というネットワークは確認できる。それなりの存在感だと評価すべきだろう。
(武内進一)