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今日のアフリカ

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WHO総会に向けた外交交渉

2020/05/15/Fri

 WHOの総会(World Health Assembly: WHA)がジュネーブで5月18日に予定されている。5月14日付Africa Confidential誌は、これに向けた外交交渉について伝えている。重要なポイントとして、2つ挙げられる。
 第1に、総会決議の内容をめぐるものである。WHAに向けて、EU、豪、NZ、ザンビアが準備している決議案は、パンデミックのなかでのWHOの役割を強調するとともに、Covid-19のワクチンができた場合は世界的に公正なアクセスが保障されるべきだとしている。これは、知的財産権を制限しても、世界に(特に発展途上国に)向けて安価なワクチンの提供を求めるものだ。この決議案を後押しするため、南アフリカのラマポサ大統領など100人以上の著名人が署名した公開書簡が14日に発表された。かつて、エイズ治療薬をめぐって同様の要求が繰り広げられたが、ワクチン開発の利益を確保したい民間企業やその立場を代弁する特に米国政府にとっては、脅威となる動きと言えよう。
 第2に、米中対立の影響である。米国のアンドリュー・ブレンバーグ在ジュネーブ国連大使は、トランプ政権の意向を受けて、テドロス事務局長が中国寄りだとして追い落としに動いている。WHAでも、テドロス氏の指導力を問題にする構えである。一方、アフリカ諸国は、こうした米国の動きに批判的である。ジュネーブのアフリカ外交団が13日に発表した声明は、「自国の政策の失敗をWHOに帰すべきではない」として米国を批判した。
 国の数が多いため発言権が強くなること、また感染症対策の経験が蓄積されていることなどから、今回のCovid-19パンデミックのなかで、国際舞台におけるアフリカ諸国の動きが注目を集めている。WHAの決議を注目したい。