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今日のアフリカ

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TICADを振り返って

2022/09/03/Sat

 8月27,28日にチュニジアで開催されたTICADは、サハラウィ・アラブ民主共和国(RASD:西サハラ)代表の出席に対してモロッコが不参加を表明するという波乱はあったものの、全体的に大きな紛糾もなく終了した感がある。今後3年間で300億ドルの資金提供というのは、昨年11月のFOCACで中国が表明した400億ドルには及ばないものの、日本政府としてはそれなりに大きなコミットメントと言えるのではないだろうか。近年減少傾向にある民間部門の対アフリカ投資が今後どう動くのかが注目される。
 TICAD8の取組みには、1)経済、2)社会、3)平和と安定、という3つの柱がある。1)には民間セクター支援、食料安全保障、債務管理、グリーン成長イニシアティブ、スタートアップ支援などが、2)には新型コロナをはじめとする感染症対策、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)推進、質の高い教育支援、科学技術協力、気候変動対策などが、3)には民主主義の定着、法の支配推進、紛争予防、平和構築、コミュニティの基盤強化などが含まれる。日本では、1)と2)に力点を置いて報じられた。
 NHKの報道によれば、岸田総理、チュニジアのサイード大統領とともに共同議長を務めたAU議長のサル大統領(セネガル)は、閉幕後の共同記者会見で、対テロ対策の重要性を訴えた(29日)。この点はルモンド紙も報じており、西アフリカにはテロ対策が予算の3割を占める国家もあるとして、武器購入がアフリカ諸国の債務負担につながらないようにしてほしいと要請した(8月29日付)。同じルモンド紙は、マリ、ブルキナファソ、ニジェールの3カ国にまたがる地域(Liptako-Gourma region)に830万ドルの支援が供与されることが決まったと報じているが、外務省の資料や日本側の報道では確認できない。
 これまでのTICADにおいても、その取組は概ね上記3つの柱として整理されてきた。平和と安定は、TICADでいつも重要な柱と位置づけられながら、具体的な取組みがわかりにくい。関連する様々な努力がなされているだけに、残念なことである。