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今日のアフリカ

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誰がブルキナファソの軍事政権を支えているか

2023/02/18/Sat

 昨年9月にクーデタで誕生したブルキナファソの軍事政権は、フランス軍に撤収を命じ、ロシアとの接近に動いている。この政権の支持基盤について、興味深い記事が16日付ルモンド紙に掲載されたので紹介する。
 Morgane Le Cam記者の署名入り記事は、イブラヒム・トラオレ(Ibrahim Toraoré)を首班とする軍事政権を支えるのは、「パンアフリカ主義者」と「ワッハーブ主義者」の同盟関係だと指摘している。
 この政権下で頻発する反フランスデモでは、「フランス帝国主義」を敵対視し、抑圧、搾取されてきたマリの主権を強調するパンアフリカニズムのレトリックに満ちたスローガンが叫ばれる。
 一方で、この軍事政権が誕生して以来、サウジアラビアで強い影響力を持つワッハーブ派の活動が活発化しているという。トラオレ(IB―イベ―と呼ばれる)は、ブルキナファソでは、1966年~80年まで政権を握ったラミザナ(Sangoulé Lamizana)以来のムスリムの国家元首である。記事では、「イベはワッハーブ派からメシアのように見られている。クーデタ以来、彼らは自分たちの時代が来た、結束して政権を支えよう、と言っている」と述べる同国の知識人の声が紹介されている。
 ブルキナファソでは、ワッハーブ派は以前から一定の影響力があったようだ。記事では、アフリカ民主連合(RDA)が主導する独立運動にワッハーブ派が関わっていたと紹介されている。クーデタ以来、多くのワッハーブ派が街で政権支持とフランス軍撤退を主張するようになった。1月半ば、第二の都市ボボ・デュラソで行われた、政権支持とフランス軍撤退要求の集会は、ワッハーブ派に近いとされるグループ「Yelema Horonya」が主宰した。このグループの指導者はイマームのMohammad Ishaq Kindoで、サウジアラビアで教育を受け、反欧米の説教をすることで知られる。
 ワッハーブ派とパンアフリカ主義者は、ロシアという表象を通じて繋がっている。この国には、旧ソ連に留学、研修で滞在した知識人が一定数存在することに加えて、マリが重要な役割を果たした。12月上旬、ブルキナファソ首相のキエレム・ドゥ・タンベラ(Apollinaire Kyélem de Tambèla)がモスクワを訪問した際に利用したのは、マリがチャーターした軍用機であった。同記事は、マリがブルキナファソのモデルになっていると指摘している。同首相が1月31日から翌日にかけてバマコを訪問した際、「マリで進行している『真の革命』は、ブルキナファソを刺激(インスパイア)している」と述べている。
 こうした記事を読むと、歴史の知識なしに現状分析はできないと改めて思わされる。この地域の歴史に関する私の知識は限られており、この記事を適切に批評することはできないが、今後もっと議論が深められるべき領域であることは疑いない。
(武内進一)