• アクセス
  • English
  • 東京外国語大学

今日のアフリカ

今日のアフリカ

コンゴ東部で虐殺事件

2022/12/07/Wed

 5日、コンゴ民主共和国政府は、11月29日にゴマ近郊のKishishe(キシシェ)で起こった虐殺の犠牲者数が272人に上ると発表した。キシシェはM23が制圧する地域であり、虐殺の責任はM23にあるとしている。
 この発表は、2007~2019年に北キヴ州知事を務めたパルク(Julien Paluku)工業大臣が、政府スポークスマンのムヤヤ(Patrick Muyaya)通信相とともに記者会見で行った。11月29日にキシシェで起こった事件については、既に12月1日コンゴ軍が、少なくとも50人の民間人が殺害されたと発表していた。新たな数字について、パルクとムヤヤは、市民団体と地元コミュニティから上がってきたものだとしている。一方、M23は一切の関与を否定している(6日付ルモンド)。
 コンゴ東部情勢をめぐっては、11月23日にアンゴラの首都でロウレンソ大統領の仲介で周辺国の会合が開かれ、停戦が合意されていた。しかし、この合意はわずか5日しか維持されなかったことになる。
 コンゴ政府はM23を「テロリスト」だとして直接交渉を拒絶し、ルワンダをその黒幕だと非難している。一方ルワンダは、M23はコンゴの国内問題であり、チセケディ政権は来年末に予定された選挙の引き延ばしを狙ってルワンダをスケープゴートにしていると反論している。東アフリカ共同体が派遣した平和維持部隊もこれまで目立った効果は上げられず、ウガンダ部隊に対して撤退を求めるデモが起きている(2日付ルモンド)。外交上の解決に手詰まり感が出ているところに、この虐殺事件が浮上した。
 コンゴ政府は6日、キシシェ事件に国際刑事裁判所(ICC)の捜査を求め、犠牲者を悼んで3日間国喪に服すと発表した。同日、M23のスポークスマンは、現在の制圧地域からの撤退を検討していると述べた(6日付New Times)。
 詳細は不明の点が多いものの、人道被害の規模がきわめて大きいことから、キシシェの事件によって紛争の局面が変わる可能性がある。その意味で注視が必要である。
(武内進一)