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今日のアフリカ

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ソマリアの飢饉

2022/09/25/Sun

 ソマリアで飢饉の恐れという報道が、しばらく前から繰り返し流れている。事態は相当に深刻さを増しているようだ。9月5日には、国連人道調整局(UN OCHA)トップが、「飢饉はもうそこまで来ている。これは最後の警告だ」と、強い調子で危機を訴えた。
 ソマリアを中心とするアフリカ北東部では、3年にわたって雨期に十分な降雨がない。旱魃は、少なくともこの年末まで続くと予想されており、事態の改善は当面見通せない。農業、牧畜が打撃を受け、すでに100万人以上が避難民キャンプへの移動を余儀なくされている。既に430万人が深刻な食糧危機に直面しているが、国連は今年末までにその数は670万人になると推計している。ソマリアの人口は1500万人強だから、人口の4割にあたる数である。
 国際社会の関心は低く、対策に必要とされる資金(15億ユーロ)の65%しか集まっていない(23日付ルモンド)。ウクライナ戦争をはじめ、世界各地で人道危機が起こっているため、ソマリアの状況に関心が向かないのである。飢饉は唐突に起こるものではない。ソマリアでは2011年にも飢饉が起こり、26万人が死亡した。犠牲者の半分は、正式に飢饉が宣言される前に亡くなったと、米国のNGOであるInternational Rescue Committeeの代表は述べている。
 ソマリアでは、イスラム急進主義勢力シャバブの活動が問題をさらに複雑にしている。シャバブは農村部を広く実効支配し、人道上の理由を含めて、西側のあらゆる関与に敵対的である。9月2日には、モガジシオ北部で援助物資を運ぶトラックが襲撃された。旱魃によって最も大きな影響を被っているのは最も貧困な農村地域だが、こうした地域ではシャバブの許可なく援助物資を配布できない。
 NGOの中には、反テロ活動を掲げて駐留する米軍が実施する様々な規制が援助活動の妨げになっていると指摘する声もある。また、8月末にシャバブが行った首都モガジシオへの襲撃事件に対して政府が全面的な反攻を宣言したことで、援助活動がさらに困難になると予測されている(23日付ルモンド)。
 飢饉は単に気候、環境が引き起こす現象ではなく、常に政治経済的要因との関係のなかでで発生する。ソマリアの現状は、改めてその事実を想起させる。
(武内進一)