• アクセス
  • English
  • 東京外国語大学

今日のアフリカ

今日のアフリカ

エリザベス女王死去への反応

2022/09/15/Thu

 英国のエリザベス女王の死去(8日)に対して、多くのアフリカ諸国で女王に対する尊敬と弔意を示す声が聞かれた。ルワンダでは、9日、カガメ大統領が、女王の死を悼み、国旗とEAC(東アフリカ共同体)旗を反旗で掲揚するよう指示した(9日付New Times)。
 とはいえ、アフリカ側の感情は複雑だ。南アフリカでは、急進的なEFF(経済的自由戦士)が「自分たちはエリザベス女王の死を悲しまない。英国は王室の下でアフリカ、そして我が国を植民地化した。1806年にケープに占領地を築いて以降、先住民は平和を失った」とコメントした。ルモンド紙は「誰もイギリスが植民地期にケニアでやったことを話さない」というケニア人の声、「自分のおばあさんが亡くなったようで涙が出るが、これが植民地心性というものか」というナイジェリア人の声を紹介している(10日付)。
 フランスのメディアでは、脱植民地化後のアフリカに対する英仏の関係を比較し、女王の役割を考える報道が目立った。これは、旧英連邦諸国を中心としたコモンウェルスが、その枠組みを超えて加盟国を増やしている動きに触発されたものだ。モザンビークが1995年に加盟し、2009年にルワンダ、2022年にガボンとトーゴが続いた。
 コモンウェルスを専門とするフランスの歴史家ロワロン(Virginie Roiron)は、ルモンド紙のインタビューに答えて、次のように分析している(9日付)。
 コモンウェルスが旧英領以外の国にとって魅力的になった背景として、グローバル化の中で、英語圏とのつながりが経済的利益に直結するようになったことがある。一方で、とりわけBrexit以降、国際政治の中心課題において人権と民主主義の優先度は次第に下がり、コモンウェルスは経済協力中心の機構になった。2013年にスリランカでコモンウェルスのサミットが開催されたとき、タミル人反乱軍への抑圧をめぐって開催に反対する意見がでた。しかし、今年6月にルワンダがコモンウェルスのサミットを主催した際、そうした反対意見は出なかった。
 日本と韓国、フランスとアルジェリアに見られるように、かつての植民地宗主国と旧植民地との間には複雑な関係があり、しばしば紛争に発展する。英国は比較的うまくこの問題を処理してきたように見え、その理由としてエリザベス女王の役割が挙げられることがある。女王が近代的なコモンウェルスの象徴であったことは間違いないが、近年のこの組織の活況に関しては、グローバリゼーションと英語の重要性の高まりという要因が大きそうだ。
 (武内進一)