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今日のアフリカ

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コロナ第三波と進まないワクチン供給

2021/07/12/Mon

 アフリカはこれまで、新型コロナウイルス感染症の被害を比較的抑制することに成功してきた。感染者数も死者数も、世界的に見ればかなり少ない。しかし、最近になって、インド由来のデルタ株が猛威を振るっており、南アフリカ、チュニジア、コンゴ民主共和国、セネガルなど、各国で感染者数の急速な増加が報じられている。
 政策担当者が深刻に懸念しているのは、発展途上国にワクチンを供給するために構築されたCovaxの仕組みが機能していないことである。Covaxでは、アフリカに対してインド血清研究所(Serum Institute of India)が製造したアストラゼネカ社のワクチンを提供してきたが、インドでの感染爆発を受けて、同研究所からの提供がストップしているのである。この件に関しては、アフリカ日本協議会の「国際保健アップデート」が詳細な情報を提供している。
 アフリカ諸国のワクチン受け入れ態勢は多様である。コンゴ民主共和国や南スーダンのように、Covaxから提供されたワクチンを使い切れずに返却した国もあるが、ルワンダやガーナのように国内でワクチンを適切に使用し、次の提供を待っている国も多い。アフリカCDCトップのンケンガソン(John Nkengasong)博士は、メディアは前者の事例ばかりを報じがちだと、ルモンド紙とのインタビューで述べている(8日付)。
 一方、ルモンド紙によれば、この間にアフリカで実施された調査で、アフリカ人のCovid-19の血清有病率が予想以上に高いことがわかったという(10日付)。6月に発表された血清有病率の調査では、キンシャサにおいて、人口の16%以上が抗体を持っていた。また、マリでの調査では、第一波後に血清有病率が11%、第二波後に55%、第三波後に77%に達したという。この調査が示唆しているのは、かなりのアフリカ人がCovid-19の抗体を持っていること、すなわち感染しても軽微な症状にとどまっているということである。この現象には、若年層が圧倒的に多い、アフリカの人口構成が関係している可能性がある。
 この記事が述べているように、Covid-19にはまだまだわからないことが多く、安易な結論は慎むべきである。まずは、当面の第三波への対応と、アフリカへのワクチン提供の拡大に努めなければならない。我々もまたCovid-19に翻弄されている点で変わりはないが、この新たな感染症は人類の知がまだまだ限られたものでしかないことも教えてくれる。