7月11日付のBBCによれば、エチオピアで総選挙が実施され、アビィ・アハメド首相が率いる与党連合である繁栄党(Prosperity Party)が436議席のうち410議席を獲得して圧勝した。これにより、アビィ首相は次期5年間、政権の座に就くことが確実となった。10月に組閣が行われるとみられている。
アビィ首相は、「今回の選挙は、歴史的にみて、さまざまな意見、立ち場の人々を包括した選挙であり、繁栄党が人々の意思によって国家運営を任されたことを喜ばしく思う」とツイッターに投稿した。今回の選挙は、2018年にアビィが首相に就任してから初めての選挙となる。選挙は、昨年8月に実施される予定であったが、新型コロナウイルス感染症拡大やロジスティックの問題のため延期され、2021年6月に実施された。有権者は3700万人強であり、そのうちの90%以上が投票した。
選挙戦には、繁栄党の他、野党として新たに組織された「社会正義のためのエチオピア市民党(Ethiopian Citizens for Soicial Justice party)」や「アムハラの民族運動(National Movement of Amhara)」などが参加した。国家機関であるエチオピア人権委員会(Ethiopian Human Rights Comission: EHRC)は、選挙において深刻な人権侵害はなかったと報告しているが、エチオピア市民党の党首は、政府役人や民兵によって広い地域で選挙妨害が行われたと主張している。
首相の出身地域であるオロミア州には、「オロモ連邦議会(Oromo Federalist Congress)」と「オロモ解放戦線(Oromo Liberation Front)」というアビィと対立する2つの野党が存在するが、どちらの政党も候補者が逮捕されたり、選挙事務所が襲撃されたりしたことで、選挙戦に参加しなかった。また、エチオピア東部のハラルとソマリ州では、治安が不安定なことから選挙は9月に延期された。さらに、先月、反政府武装勢力であるティグレ人民解放戦線(TPLF)が州都メケレを奪還したばかりのティグライ州では、選挙が行われていないばかりか、その日程さえ決まっていない。
ティグライ州における戦争と人道危機により、アビィ首相に対する国際社会の見方は厳しくなりつつある。こうしたなか、総選挙で圧勝したアビィ首相が対立する各政党にどのような姿勢を示すのかが注目される。