ズマ前南アフリカ大統領は、7日深夜、収監のため自ら出頭した。強制措置の執行まで残り時間わずかとなるなか、憲法裁判所の命令に従った形である。
ズマは、在任中に汚職を助長し、国家に損害を与えたなどの容疑で、ゾンド(Raymond Zondo)司法副長官がトップを務める委員会において調査対象となっている。しかし、彼は同委員会の調査に協力せず、度重なる出頭要請を無視し続けてきた。これに対して憲法裁判所は、6月29日、ズマに対して、法廷侮辱罪で15か月の収監を命じたのである。
ズマは当初この命令が「反憲法的だ」と反発し、その後、コロナ禍の中で収監されるのは健康上耐え難いとして、命令の取り消しを求めた。しかし、裁判所は応じず、7日中に出頭しない場合は、警察を派遣して強制的に収監すると予告していた。一方、ズマの支持者側は憲法裁の決定に反発して集会を開き、政治的混乱が懸念されるなか、ぎりぎりになってズマは自ら出頭を決断した。
この間、与党ANCは、党員に平静を呼びかけただけで静観した。ズマは2018年に大統領職を退いた後も、党内に強い影響力を保持していた。しかし最近になって、ズマに近い有力者のマガシュレが党書記長職を解任されるなど、その影響力を失いつつある。今回の収監は、その傾向を強めるであろう。
とはいえ、ズマが、特に地盤であるクワズールー・ナタル州において多くの支持者を擁していることもまた事実である。今後本格化するゾンド委員会の調査は、ANC、そして南ア政治に大きな影響を与えることになろう。