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今日のアフリカ

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第二期トゥアデラ政権の多難な船出

2021/01/19/Tue

18日、中央アフリカの憲法裁判所は、昨年12月27日に実施された大統領選挙において、現職のトゥアデラ(Faustin-Archange Touadéra)が再選されたと正式に認めた。トゥアデラに敗れた13名の候補者は、選挙の無効を主張して共同で提訴していたが、これは却下された。彼らは、選挙には大規模な不正があり、加えて治安悪化のため有権者の多くが投票機会を奪われたとして、無効を訴えていた。
 選挙は有効と認められたが、無効の訴えに根拠がないわけではない。トゥアデラは53.16%の得票で決選投票を待たずに当選を決めたが、投票率はわずか35.25%だった。3人に2人は投票所に足を運ばなかったわけで、その理由が有権者の無関心ではなく、治安の悪化にあることは明らかである。12月初めから、中央アフリカでは前大統領ボジゼの下で反乱軍が統合され、首都への進軍を宣言して攻撃を強めていた。1月13日にはバンギに攻撃があり、政府軍は、国連軍をはじめとする外国勢力の力を借りてこれを撃退した。
 18日付のルモンド紙は、「政権を守るための奇妙な軍事同盟」と題して、中央アフリカの現状を報告している。同国のトゥアデラ政権は、内戦終結後の選挙によって2016年に発足したが、地方ではその権力を確立できず、複数の武装勢力が群雄割拠する状況が続いてきた。さらなる治安悪化を防ぐうえで、国連平和維持部隊(MINUSCA)の展開が一定を役割を果たしてきたが、それに加えて、同国は2017年以降ロシアとの関係を急速に深めてきた。ロシアは、民間軍事企業のWagner社を通じて、中央アフリカ政府に多数の軍事顧問や傭兵を送っている。この会社はクレムリンに近く、リビアにも多数の傭兵を派遣している。さらに、2020年12月に治安が悪化すると、ルワンダが二国間防衛協定に基づいて数百名の兵士を派遣した。反政府勢力の首都への攻撃に際して、防衛の主体を担ったのは、ルワンダ軍とロシア民兵だったという。
 中央アフリカはもともとフランスとの関係が深い国だが、こうした展開のなかでフランスは目立った動きを見せていない。マクロン大統領はトゥアデラの当選に祝意を示したが、ルモンド紙の記事は「フランスは麻痺しているようだ」として、「トゥアデラ支持を言明するのは行き過ぎだ」という研究者の発言を紹介している。 
 今回の大統領選挙は、治安悪化が懸念されるなか、国連が主導して実施されたものだ。結果として、新たな任期に向けて期待が高まったというよりも、混乱がいっそう深まった印象がある。選挙の結果、トゥアデラ政権が続くことは決まったが、その行き先はさらに不透明になりつつある。