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ナイル川のダム建設をめぐりエチオピア、エジプト、スーダンが協議再開に同意

2020/07/26/Sun

7月22日付のBBCによれば、論争を招いているナイル川の「大エチオピアルネッサンスダム(the Grand Ethiopian Renaissance Dam: Gerd)」建設工事に関して、エチオピア、エジプト、スーダンの3国が協議を再開することで合意した。

Gerdは、2011年にエチオピアがナイル川の支流である青ナイルに建設を開始した巨大ダムであり、スーダンの国境から30キロ離れたベニシャングル=グムズ州内に位置する。現在、総工費45億ドルをかけて建設工事が進められている。完成すると、総貯水量740億立方メートル、総発電量6000メガワットを誇るアフリカ最大の水力発電所となる。

ダム建設が始まってから、エジプト、スーダン、エチオピア3国の関係は急速に悪化した。エチオピアは、ダム建設によって、国内の不安定な電力事情の改善と経済開発の進展を期待している一方、国内の水需要のほぼすべてをナイル川に依存しているエジプトやスーダンは、ダム建設によって水量が減少するのではないかと強い危機感を表している。

エチオピアとエジプトは、AUやアメリカの仲介の下、いつ、どのようにダムの貯水を行うか、どれぐらいの水量を放水するかに関して交渉を続けてきたが、未だに同意には至っていない。背景には、ダムがナイル川下流域の水量に及ぼす影響について誰も明確な答えを出していないことがある。エチオピアは、ダム建設はナイル川の水量に悪影響を及ぼさないという主張を繰り返す一方、エジプトはこの主張を認めず、水量の変化に関して十分な根拠が示されるまで建設は中止されるべきだと反論している。

ナイル川の取水権については、1929年にエジプト-イギリス間で締結された条約によって、エジプトが一定の割当水量を確保すること、及びナイル川上流域での河川開発事業に対する拒否権を持つことが認められた。また、1959年にエジプト-スーダン間で締結された条約では、エジプトが、ナイル川の年間平均水量の66%を、スーダンが22%を利用できると規定されている。

ただし、この2つの条約は、ナイル川上流域のアフリカ諸国には相談されずに締結されており、青ナイルの源流に位置するエチオピアは不平等であると主張してきた。2010年、エチオピア、ウガンダ、タンザニア、ルワンダ、ケニアのナイル川上流域の5ヶ国は、流域国は他国に深刻な影響を与えない範囲で水資源を自由に利用してよいとする「ナイル流域協力枠組み協定」(エンテベ協定)に署名した。しかし、下流域のエジプトとスーダンは同協定に調印していない。

今月15日、エチオピア政府は、衛星画像の解析を通じてダム水量の増加を確認したと発表した。同政府は、これは意図的な貯水ではなく、雨期が始まったことで自然にダムに水が貯まった結果であり、すでに初年度の目標である貯水量に達したと説明している。ただし、エチオピア政府は、ダムが満水になるまで今後5~7年かかる見通しであることをすでに公表しており、今回のエチオピア政府の発表は、同意なく実施された貯水としてエジプトとスーダンが強く反発している。

協議の再開にあたり、エチオピアのアビィ首相は、ダムの貯水は誰にも悪影響を与えることはないことを強調している。一方、エジプトのシーシー大統領は、ダムの貯水と管理のルールに関して法的に拘束力のある協定を締結したいという声明を出している。今回の協議再開によって、ナイル川の水資源をめぐる各国の利害がどのように調整されるかが注目される。