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今日のアフリカ

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フェリシアン・カブガの逮捕

2020/05/17/Sun

 報道各社は、16日パリ郊外で、フェリシアン・カブガ(Félicien Kabuga)が逮捕されたと報じた。カブガは、1994年にルワンダで起こったジェノサイドで重要な役割を果たしたとして、長く捜査対象となってきた人物である。トゥチ殺害を扇動したことで知られる「千の丘ラジオ」の出資者であり、暗殺されたハビャリマナ元大統領とも姻族関係にあった。ルワンダ国際刑事裁判所でも手配されていたが、これまで逮捕を逃れてきた。
 16日付ルモンド紙の報道では、関係者はカブガの逮捕を一様に歓迎している。被害者団体「イブカ」(Ibuka)のヨーロッパ代表であるリャムクル(Félicité Lyamukuru)氏は、カブガは1994年ジェノサイドの「アイヒマン」だと述べている。フランスでルワンダ・ジェノサイド加害者の訴追に関わるゴティエ(Alain Gauthier)氏は、逮捕は喜ばしいとしつつも、カブガがパリ近郊に住み偽造パスポートを所持していたことから、フランス側に協力者がいた可能性があると指摘している。また、この逮捕が、残された重要人物アガト・ハビャリマナ(Agathe Habyarimana)の逮捕につながることを期待すると述べた。アガトはハビャリマナ元大統領の妻で、当時の権力中枢におり、ジェノサイドの遂行を主導したとされる人物である。
 事件から四半世紀が過ぎてなお、ルワンダ・ジェノサイドに関わる犯罪者の捜査は続いている。「アイヒマン」の比喩が示す通り、ナチス・ドイツの訴追と同様のプロセスである。今後、カブガがフランスで裁かれるのか、ルワンダに引き渡されるのかが、議論になろう。