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今日のアフリカ

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新型コロナウイルス感染症の難民への影響

2020/05/10/Sun

5月5日付けアルジャジーラは、人々が密集して暮らし、医療設備が貧弱なケニアの難民キャンプで、難民が新型コロナウイルスの脅威に直面していると伝えている。

ケニアでは、東部のダダーブ難民キャンプに約22万人、北西部のカクマ難民キャンプに約19万人の難民が暮らしている。彼らは、ソマリア、南スーダン、コンゴ民主共和国(DRC)、ブルンジなどの出身で、なかには20年以上滞在を続けている者もいる。

ケニア政府は、コロナ封じ込め対策として、難民キャンプから外に出るために必要な移動許可証の発給を停止した。キャンプではロックダウンこそ行われていないものの、夜間外出禁止令が出されている。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、ウイルス感染予防のため、食糧配給時に間隔を空けて並ぶなど、難民に自己隔離し、社会的距離を保つように指導している。しかし、ひとつの水道を数十人の難民が共同で使っている状況を考えると、つねに他人と距離を保つことは不可能に近い。UNHCRは水道の数を増やしているが、状況が大幅に改善されたわけではない。

現時点でケニアの難民キャンプから新型コロナウイルスの陽性例は報告されていないものの、人権団体は、キャンプ内の医療設備は貧弱で、ウイルスが蔓延すれば大惨事は避けられないと警告している。一方、難民にとって切実な問題は、難民キャンプの食料価格が高騰し、十分な食料を確保できないことである。

一方、ウガンダでは、11の県(district)に設立された難民居住地と首都カンパラに140万人の難民が暮らしている。難民の大多数は、南スーダンとDRCの出身である。ウガンダ政府は、コロナ封じ込め対策として3月中旬に国境を封鎖し、新たな難民の受け入れを中止した。3月末には全土でロックダウンを実施し、TV放送を通じて「難民は難民居住地から外に出るべきではない」と通告した。

4月14日付けのガーディアン紙によると、4月中旬、世界食糧計画(WFP)は、予算不足のために、難民居住地で配給する食糧援助の30%削減を決めた。これにより、ロックダウンのためにマーケットへのアクセスが制約されている難民は、食料の入手がさらに困難になった。

難民居住地から国際NGOや国連機関の外国人スタッフが撤退するなか、難民による自助組織が、支援のギャップを埋め合わせようと奮闘している。4月29日付けのThe New Humanitarianは、1)ナキヴァレ難民居住地で、建設プロジェクトを実施する小規模な組織が難民を雇用してマスクを製作している、2)アルア県で、難民キャンプのコミュニティ開発センターが、新型コロナウイルスに関する公式情報をテキストメッセージで配信している、3)カンパラで、難民の地域社会組織(CBO)が、穀物粉、石けん、豆、砂糖、食用油を難民世帯に届けている、といった事例を伝えている。

ケニアやウガンダで難民たちは、新型コロナウイルスという見えない脅威に不安を感じながら、食料、医薬品、基本的サービスへのアクセスをいかに確保するかという差し迫った困難と闘っている。