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今日のアフリカ

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アフリカ諸国の新型コロナ対策にポジティブな見方

2020/05/01/Fri

ファイナンシャルタイムズ紙は、アフリカ諸国がここまで総じて新型コロナウイルスの感染抑止に成功しているとの見方を示している。4月28日の記事では、先週ナイロビのキベラスラムで400人をランダムに調査した結果、陽性者はわずか3人だったとの根拠などを示しつつ、慎重に「最悪の事態の回避に成功しているのではないか」と述べた。
 30日の紙面では、コラムニストのデイビッド・ピリングが、アフリカ諸国の新型コロナウイルス感染症対策は、ここまで総じてよくコーディネートされており、効果的だったと評価している。記事では感染者数の推移を時系列で示すグラフが掲載されているが、南アは欧米諸国よりもずっと低く、韓国と同じ軌道を描いている。
 アフリカ諸国の迅速な対応は、それほど驚くべきことではない。ピリングは2点指摘している。第1に、エイズやエボラなど、感染症の経験が蓄積されていること。第2に、中国や欧米で先に感染が広がり、指導者が早期に警戒態勢を取れたことである。加えて、アフリカ感染症センター(African Centers for Disease Control and Prevention)が早い段階でアフリカ首脳を集めたビデオ会議を開催し、取るべき対策について科学的知見を供与したことも重要だったと評価している。
 アフリカ諸国の首脳は自国の医療インフラの弱さを自覚しており、専門家のアドバイスに素直に従ったということだろう。南アフリカは、新型コロナウイルス感染症の死者が一人も出ていない段階で、ロックダウンに踏み切った。
 危機的状況と認識されるなかで医療専門家の影響力が増大し、厳しい封じ込め政策がとられた結果、感染の拡大が抑えられたと言える。タンザニアのように経済活動の維持を優先し、厳格な封じ込め政策をとらなかった国もあるが、マグフリ大統領は欧米メディアから批判を浴びた。
 新型コロナウイルス感染症の抑え込みにアフリカ諸国が成功しつつあることはもちろん喜ばしいが、大きな犠牲を伴う措置であったことは忘れるべきでない。経済的な打撃はもちろんのこと、多くの国で強権的な措置が幅を利かせ、ケニアでは夜間外出禁止令を破ったとして12人が射殺されたという。今回アフリカ諸国が取った感染症対策の評価については、もう少し時間をかけた検討が必要になろう。