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今日のアフリカ

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アフリカ人差別の外交問題化

2020/04/14/Tue

 中国の広州で、新型コロナウイルス感染症に関してアフリカ人がいわれのない差別を受ける事態が広がり、外交問題に発展した。広州市は中国・アフリカ間貿易の拠点であり、多数のアフリカ人が居住・往来する。ルモンド紙(12、13日付)とファイナンシャルタイムズ紙(13日付)をまとめると、事の成り行きは次のようなものである。
 3月下旬、広州で、5人のナイジェリア人が検疫隔離措置を守らず、外出したことが明るみに出た。その後、SNSには差別的な書き込みが続き、アフリカ人がホテルやスーパーマーケットへの立ち入りを拒否されたり、住居から追い出されたり、検査結果が陰性でも隔離施設に連行されるといった状況が広がった。
 これに対して、北京のアフリカ各国大使は中国外務省に書簡を送り、「アフリカ諸国民に対する執拗なハラスメントと侮辱」が続いており、アフリカ大陸で中国人への反発が広がる恐れがある、として善処を訴えた。ナイジェリアとガーナでは政府が中国大使を呼んで抗議し、AU委員会のムーサ・ファキ・マハマト委員長もAU駐在中国大使を呼び、事情を聴いた。中国外務省も12日、中国はあらゆる「人種主義」を拒否するとして、善処を約束した。
 今回の事件は、Covid-19の再発防止に敏感になっている中国で起こった。トランプ政権は早速、今回の事件が中国・アフリカ関係の空虚さを示すものだと揶揄した。しかし、社会的な緊張状態の下で、特定の人々がいわれのない差別の対象になることは、どこにでも起きうることだ。東日本大震災の後で見られた、福島県出身者への差別や中傷はその典型である。中国をあげつらう前に、この事件を他山の石として自戒すべきであろう。