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今日のアフリカ

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リビアの石油輸出停止措置の影響

2020/02/23/Sun

ハフタル将軍率いる反政府勢力「リビア国民軍」(LNA)は、1月17日以来、制圧地域からの石油輸出を停止している。2月17日付ルモンド紙によれば、これによりリビアの石油輸出量は日量120万バレルから11万バレルへと、90%減少した。石油輸出量の激減はリビアの国民にとっては生活苦をもたらすが、国際石油市場の観点からは問題になっていない。むしろ、石油が過剰生産状態にあり、中国経済の減速やコロナウイルスの影響もあって石油市場が軟調傾向にある現在、リビアの輸出停止は他の石油生産国から歓迎されている。
 ハフタルのLNAは東部キレナイカ沿岸地域の4つの石油ターミナルを閉鎖したが、石油が武器として利用されたのは2019年4月の攻撃開始以来初めてのことである。主要な石油ターミナルはLNAの制圧地域であるキレナイカに位置するが、石油収入の再配分は中央銀行を管轄する暫定政権が権限を握っている。ハフタルは中央銀行が石油収入をトリポリの民兵に横流ししていると非難したが、石油輸出を停止したLNAの姿勢は、石油生産地域キレナイカが昔から抱いていた不満を体現している。
 ハフタルは、反政府勢力とはいえ、米国、フランス、ロシアなど、主要国から一定の支持を得てきた。その背景には、これまで彼が石油市場の秩序維持に貢献してきたという評価がある。しかし、ハフタルは今回、自ら石油輸出を停止し、問題の種となった。ルモンド紙は、今回の措置をリビアの戦争の転換点だと評価している。