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今日のアフリカ

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ロシア・アフリカサミット

2019/10/27/Sun

10月23,24日に黒海沿岸のソチで、初めてのロシア・アフリカサミットが開催された。ちょうどTICADのような形式の首脳会議で、40か国以上のアフリカ諸国から元首級の政治指導者が参加した。会議では、プーチン大統領が前面に出て、貿易・投資のさらなる拡大を謳いあげた。ロシアの対アフリカ貿易額はトルコ、ブラジル並みで、中国には遠く及ばない。また、その内訳は、武器や天然資源の取引が多く、ロシア側の大幅な出超になっている。プーチンは数年のうちにアフリカとの貿易額を倍増するとぶち上げ、サミットでは1250億ドルの取引が成立したという。
 サミットでは、欧米への対抗という側面が強調された。宣言では、米国などを意識して「国際貿易と経済協力における政治的独裁と通貨による脅しに抵抗する」という文言が宣言に含められ、ドルやCFAフランに依存した貿易体制からの脱却が謳われた。また、「グッドガバナンス」の要求やリベラリズムへの批判や対抗も強調された。
 ファイナンシャルタイムズやルモンドは、サミットについて厳しい見方をしている(10月24日付記事)。1250億ドルの取引にしても、MoUが結ばれたに過ぎず、特に公企業の約束は実現する可能性は低いと論じている。ガスプロムのような国営企業にとっては、リスクを取ってアフリカに投資するよりもヨーロッパや旧ソ連圏に投資する方がインセンティブが高い。ガスプロムは生産量で言えば世界最大のガス生産企業であり、ロシア経済の要だが、アフリカでの存在感はほとんどなく、今後もすぐに増える見込みはないという(10月25日付ルモンド)。
 とはいえ、こうしたサミットが開催され、国際社会の中心的な価値であるリベラリズムへの対抗が打ち出されること自体、時代の変化、世界の多極化を示している。ロシアとの二国間会談でムセヴェニは、最大の課題は国防と治安だと述べた(10月24日付FT)。ロシアが提供する武器に関心を示す国は多いだろう。10数年前までアフリカ諸国が持つ外交カードは欧米だけだった。そこに中国が加わったことで、アフリカをめぐる外交、国際関係は大きく変化した。今度は、ロシアがそこに加わろうとしている。