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今日のアフリカ

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エチオピア南部の武装解除作戦

2019/10/19/Sat

10月16日付ルモンド紙によれば、1か月ほど前からエチオピア南西部オモ川下流域の牧畜民ボディに対して、エチオピア政府治安部隊が武装解除作戦を展開し、その過程で多大な人権侵害が発生している可能性が高い。ボディ長老などの証言によれば、武装解除作戦に伴い、殺人や恣意的な収監など、非人道的な行為が頻発している。オックスフォード大学のDavid Turton教授は、証言には十分な信憑性があり、国際的な人権保護組織による調査が必要だと述べている。
 ボディはエチオピア政府と長年にわたる緊張関係があり、特に近年ボディの居住地にサトウキビプランテーションや水力発電用ダムなどが建設されたことで、それが高まっている。長老によれば、ここ数か月の暴力は過去に例のない水準に達している。収監されたボディの人々は食料を与えられず、炎天下に放置されたと伝えられている。
 オモ川下流域には、10万ヘクタールのサトウキビプランテーションやその加工工場の建設計画があり、政府は重要な地域と見なしている。ボディは南スーダンから流入した銃器を購入していたが、警察は、ボディがそれを用いてサトウキビ加工工場労働者を襲撃したとして武装解除作戦に踏み切った。警察によれば、ボディの武装解除は10月初めに9割がた完了し、次にムルシの武装解除作戦に移行するとのことである。
 ボディは故福井勝義教授の研究によって、日本でもよく知られた牧畜民である。そして、エチオピア南部の牧畜民が近年の開発に伴って生活の変容を迫られていることも、多くの日本人研究者が指摘している。また、武装解除作戦がしばしば深刻な人権侵害をともない、初期の目的達成に失敗することも、ウガンダなどで検証されてきた。アビィ首相のノーベル平和賞受賞に沸くエチオピアで、深刻な事態が展開していないか注視する必要がある。