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今日のアフリカ

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ブルキナファソで遺伝子操作の蚊を放出する計画

2019/09/24/Tue

ブルキナファソのマラリア研究チームが、2020年7月に不妊の遺伝子操作を施したメスの蚊を5000匹放出する実験をおこなうことを計画していることがわかった。このプロジェクトは、オックスフォード大学を含む複数の研究機関の研究者を擁するTarget Maralia Projectによって実施されるもので、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の資金提供を受けている。不妊の蚊を放出することでマラリアを媒介するハマダラカの自然減を引き起こし、マラリアの感染拡大を抑制することが期待されている。プロジェクトでは一年間のモニター実験を計画しており、実験期間を通じて研究者を訓練し、地元住民の理解を得ることを促すという。

不妊の蚊を放出するこの手法は、2000年代に入ってから世界的に着目されるようになったもので、実験室における実験では条件を満たせば一定の効果が見込めるとされている。2000年代後半よりフィールドテストが検討されてきた手法であるが、実際にハマダラカを対象にフィールドテストが実施されるのは世界初となる。研究チームは、長期的に効果が見込まれ、低価格で実現可能な対策を開発することを目標としている。

ブルキナファソの昨年のマラリア罹患者数は1200万人、うち死者は約4000人とされており、60%が5歳以下の子どもである。ブルキナファソ西部のSouroukoudinga村はDiabate教授のこのプロジェクトを受入れるとしている。村長はプロジェクトを歓迎しており「このプロジェクトが成功することを心より祈っている」とコメントしている。

遺伝子操作を施した蚊を放出することに関して、ブルキナファソの活動家は、経済的に脆弱な地域で実施するには不確実な手法であることを指摘しており、いままで確認されてこなかった病原体の放出やウィルスの拡大を引き起こす可能性を懸念している。また、環境グループTerre De VieのAli Tapsoba氏は生態系への影響を指摘し、国境を越えて影響が拡大することも考えられると指摘している。これに対しプロジェクト側は、国の自然規制当局と倫理委員会によって監督されていると発表している。

遺伝子操作を施した蚊による自然界への影響はいまだ不明な点が多い。ブラジルとパナマにおけるジカ熱に関する同様の実験は、逆にメスの蚊の増加を引き起こしているという指摘を受け、実験継続が断念されている。またフロリダでも同様の計画が世論の反対を受けて保留状態となっている。蚊の寿命は数ヶ月でありリスクは無視できるほどであるとされているが、慎重に検討することが求められている。