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今日のアフリカ

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ケニアの石油開発

2019/08/24/Sat

8月20日付ルモンド紙は、ケニアの石油開発の影響に関して、IFRI(フランス国際関係研究所)所属のオジェ(Benjamin Augé)研究員に対するインタビュー記事を掲載している。興味深い内容なので、概略を紹介する。
 8月1日、ケニヤッタ大統領は中国と1200万ドル分の石油売却契約を結んだと発表し、ケニアは産油国の仲間入りを果たした。9月までにモンバサ港にトラックで運ばれた20万バレルが、中国向けに輸出される。
 北西部トゥルカナの油田は日量6万~8万バレルで、生産規模としてはカメルーン並み。大油田ではなく、すでに規模が大きいケニア経済に巨大な影響を与えることはないとオジェ研究員は見ている。ソマリアとの国境付近でオフショア生産がなされる予定で、ソマリアとの間の係争が決着すれば石油生産はさらに拡大し、経済の重要な構成要素となろう。開発はまだ初期段階で、ケニヤッタとしては2017年の大統領選挙以前にこの段階まで持って来たかったが、大幅に予定が遅れた。
 開発の第二段階として、生産地からラムまで石油パイプラインを建設することが予定されている。ラムはソマリアとの国境に近く治安上の問題を抱えているため、このプロジェクトの株式の25%を保有するフランスのTotal社は、ラムで事業を展開することに依然消極的である。現在ラムの貯蔵施設が完成していないため、石油はモンバサに貯蔵されている。ラムにはまだタンカーを接岸する港湾能力もないが、ケニア政府はラムからの石油輸出にこだわっている。その理由として政府は、モンバサへの集中を防ぎ、新たな開発地帯をつくりたいと主張しているが、政権に近いキクユ人がラム近くの土地を多く所有しているからだという見方もある。
 隣国のウガンダでは、ケニア以上に石油開発が進んでいる。ウガンダ産の原油はケニア経由での輸出が考えられていたが、ケニヤッタ大統領がモンバサからの輸出を認めなかったため、Total社はウガンダ政府の意向を受けてタンザニアと交渉し、タンガ港から輸出する予定である。
 産出量の規模とケニアの人口(5200万人)を考えれば、石油のインパクトはそれほど大きくない。分権化が進んだため、国家財政への石油の貢献はほとんど期待できない。一方、ウガンダが石油生産国として重要になれば、東アフリカ諸国間関係が変わる可能性がある。ムセヴェニがパイプラインでケニアを迂回したのも、その兆候かもしれない。ウガンダ経済が拡大すれば、両国間関係に影響が及ぶだろう。
 以上がインタビューの概要である。東アフリカでの石油開発は、生産規模としてはそれほど大きくないとはいえ、地域経済や国際関係を大きく変える可能性がある。