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今日のアフリカ

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中国系企業の労働条件

2019/07/22/Mon

アフリカにおける中国系企業に関する研究成果が発表され、話題となっている。ロンドン大学SOAS校のCarlos Oya氏をリーダーとする研究グループは、アンゴラとエチオピアの製造業と建設業部門において、合計76社の中国系企業と非中国系企業の比較調査を実施した。76社のうち31社が中国企業であった。加えて、アンゴラ人、エチオピア人労働者1500人にもインタビューした。調査によれば、中国系、非中国系企業の間で、現地労働者の雇用割合やトレーニングシステムに差はない。アンゴラでは内戦の影響により労働力不足が深刻で、中国系も非中国系も現地化比率が低いが、それでも中国系企業は現地労働者比率を10年前の50%から74%に上げている。給与水準にも大きな差はない。アンゴラで中国企業の給与は2割低いが、住居と食事つきであるため、実質は変わらない。
 この調査を紹介した7月3日付ファイナンシャルタイムズのコラムニストは、アフリカでの中国企業の労働政策を悪魔化するのは誤りだと結論付けている。中国企業については、中国から労働者を連れてきて現地雇用に貢献しないといった評判がある。しかし、この研究はそうした主張には根拠がなく、労働者の扱いにも中国系、非中国系企業の間に実質的な差がないことを示している。コラムニストは、アフリカ政府が労働者の条件を上げたいなら、入札条件に書き込むべきだとも主張している。
 中国系企業をめぐっては様々な噂が飛び交う一方、実態はなかなか知られていない。貴重な研究報告である。