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今日のアフリカ

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スーダン軍事政権と米国ロビー

2019/07/02/Tue

7月1日付ファイナンシャルタイムズ紙によれば、スーダン暫定軍事委員会の実力者モハメド・ハムダン・ダガロ中将(通称Hemetti)が、カナダのロビー会社Dickens & Madson (D&M)とコンサルタント契約を結んだことが明らかになった。米国司法省の外国代理人登録法(Foreign Agents Registration Act)によるものである。ロビー会社は米国企業と外国政府の間を取り持ち、米国高官とのアクセスのみならず、第三国政府との仲介や取引も進めてきた。トランプ政権はそれ以前の政権に比べて外部からの影響力に反応しやすいと見られており、ロビー活動が活発に行われている。チャタムハウスによれば、アフリカ政府は従来からロビー会社を利用してきたが、トランプ政権に対してはそれがより効果的だと見ている。ワシントンのNPOであるOpenSecrets.orgによれば、2017年に外国の政府、個人、企業は米国ロビー会社に10億ドル支払ったとのことである。
 D&Mとの契約は5月7日に結ばれた。D&Mは、スーダン暫定軍事委員会のために米国の政策に影響を与え、スーダン軍のために資金、施設を確保するよう努めるという。また、ロシア、サウジアラビア、UN、AUに対してもロビー活動を行うとのことである。ロシアでは、政府高官や政治家との会合のアレンジや小麦、ディーゼル、食肉といった輸入品確保に向けた交渉が見込まれている。リビアでは、ハフタル将軍の支援がミッションになる。ハフタル将軍もまた、D&Mの顧客である。D&Mの社長Ari Ben-Menasheは、もとイスラエル諜報機関に所属していた人物とのことである。コンゴの前大統領ジョゼフ・カビラもテルアビブに本拠を置くMER Security and Communication Systems Ltd.と契約を結び、2016年12月から2019年1月までに950万ドルを支払い、うち400万ドルは米国企業に流れたとファイナンシャルタイムズ紙は報じている。
 ここで報じられている内容は、外部にはきわめて見えにくいものだ。ここから言えるのは、アフリカ各国の内政が米国をはじめとする国際政治と見えにくい形で、深く、複雑に繋がっており、相互に影響を与えていることである。そうした前提で、アフリカ政治を観察する必要がある。