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今日のアフリカ

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ラマポサの選挙戦

2019/05/06/Mon

南アフリカでは8日の総選挙に向け、選挙戦も終盤である。5日、ラマポサ大統領はジョハネスバーグのスタジアムで数千人の支持者を前に選挙演説を行い、「不処罰の時代は終わった」として、汚職への加担がはっきりすれば誰であれ党や政府の要職から外すことを明言した(6日付ファイナンシャルタイムズ)。当たり前のようにも聞こえるが、この発言からANC内の亀裂とラマポサの苦しい立場を読み取ることができる。
 5月3日付Africa Confidentialは、ラマポサが野党のみならず、ANC内でも前大統領ズマに近い議員らと熾烈な主導権争いを強いられていると分析している。ズマ政権の下で汚職が拡大し、「国家の簒奪」(State Capture)が議論されてことはよく知られている。しかし、ラマポサ政権においてもズマ派の影響力は衰えていないし、次回の選挙でも大きく変わらないと予想されている。
 南アの選挙は拘束式比例代表制で行われるが、ANCの書記長マガシュレ(Ace Magashule)はズマ派であり、ズマに近い議員を名簿上位に配置した。選挙でANCの得票率が少々下がっても、ズマ派は勢力を維持すると見られる。
 ズマ派の戦略として、地方選挙に力を入れ、国政選挙はラマポサらに協力しない姿勢を取っているとの指摘がある。ラマポサの地元であるハウテン(Gauteng)ではANCが民主同盟(DA)と激しく競合しているが、ラマポサの地盤でANCが敗北すれば選挙後に党内で優位に立てるとの見通しから、ズマ派は選挙戦から手を引いているとされる。
 ラマポサの戦いは厳しい。ANCを強力に支えてきた労働組合のCosastuは、巨大電力会社Eskomの再編政策に反対し、今回の選挙ではANCに資金的支援を提供していない。ANCの女性・青年組織もラマポサには冷淡で、青年組織指導者のなかには急進的なEFF(経済的自由戦士)に流れた者も多いという。
 8日の選挙がラマポサ政権の基盤強化に資するのか、その弱体化をもたらすのか。結果が注目される。