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今日のアフリカ

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ナイジェリア、セネガルの大統領選挙

2019/03/10/Sun

2月下旬、ナイジェリアとセネガルで大統領選挙が実施された。ナイジェリアでは、当初2月16日に予定されていた選挙が当日未明に1週間延期され、23日に実施された。結果は現職のブハリが58%の得票率で対立候補のアティクを下した。セネガルでは、24日に大統領選挙第1回投票が実施された。フランスと同様セネガルでは、第1回投票で過半数の得票を獲得する候補がいればそこで当選が決まり、いなければ上位2名で決選投票が行われる仕組みだが、今回は現職のマッキー・サルが58.27%の得票率で第2回投票を待たずに当選を決めた。いわゆる「KO勝ち」である。
 両国の選挙を通じて、成果と課題が明らかになった。両国とも、大きな暴力なく選挙が実施された。これは重要な成果である。ナイジェリアで、選挙開始直前になって1週間延期が発表されたことは大きな批判を招いたが、選挙当日に大きな混乱は見られなかった。しかし、ナイジェリア大統領選挙の投票率は、1999年に民政復帰して以来最低の35.6%に留まった(3月8日付Africa Confidential)。選挙が1週間延期された影響のみならず、2人の候補者に新味がなく、有権者が関心を失ったことが原因と言われる。それだけ選挙が人々の生活になじんできたとも解釈できるが、政治家が大衆から遊離した存在と見なされているのだろう。
 セネガルでは、大統領選挙の投票率は66.23%とかなり高かった。前回に比べて12%も増加したという(3月7日付ルモンド)。とはいえ、今回のセネガル大統領選挙には、前ダカール市長Khalifa Sall、前大統領の息子Karim Wadeという2人の有力な対抗馬が立候補できなかった。前者は汚職容疑で収監中であり、後者も現政権下で汚職容疑で逮捕され、釈放後も国外に留まっている。前大統領ワッド(Abdoulaye Wade)は選挙期間中に帰国し、選挙をボイコットし、投票所に火をつけよと支持者を焚きつけた。
 有力な対抗馬を選挙から排除する手法は、コンゴ民主共和国やルワンダなど、多くの国でも見られる。セネガルのように民主主義が根付いたと考えられている国にあっても、子細に見れば、事はそれほど容易ではないということである。(セネガルの選挙に関しては、(長辻貴之「2019年セネガル大統領選挙に向けた展望――2012年大統領選挙と2017年国民議会選挙から」『アフリカレポート』No.56, pp.83-92、が参考になる)