• アクセス
  • English
  • 東京外国語大学

今日のアフリカ

今日のアフリカ

フランスによるチャド北部への空爆

2019/02/17/Sun

2月8日付ルモンド紙は、フランス軍参謀本部が2月3日~6日にチャド北部に軍事介入し、戦闘機による爆撃を行ったと報じた。これに伴い、フィリップ首相、ルドリアン外相らが上下両院で軍事作戦について説明した。外相の説明によれば、デビィ大統領から発出された文書による要請に基づき、リビア南部から侵攻した武装勢力に対して空爆がなされた。チャドにおけるクーデタを防ぎ、国家を防衛するため、とのことである。
 14日付ルモンド紙は社説で、チャドへの軍事介入をめぐるジレンマについて論じている。チャドはサヘルの地政学上、極めて重要な位置にある。北のリビア、東のナイジェリア(北東部)、南のカメルーン、中央アフリカ、西のダルフール、南スーダンと、チャドの周囲はいずれも政治的に不安定である。フランスがサヘル地域で実施している軍事作戦(バルカンヌ作戦)にしても、チャドに大きく依存している。一方で、チャドのデビィ政権は顕著に権威主義的性格を帯びている。今回リビア南部から侵攻した武装勢力は、国内の反政府勢力であった。フランスは2008年にもデビィ政権を防衛するためにチャドに軍事介入したが、独裁政権を支援しているとして、チャド国内の野党勢力から強い批判を浴びている。
 この種のジレンマはアフリカの至る所で見られるが、一般論として非常に難しい問題である。しかし、今回の空爆はずいぶん唐突な印象を受ける。首都から遠く離れた地域への爆撃だし、デビィ政権が大きく揺らいでいたわけでもない。中央アフリカのボジゼ政権のようになっては遅すぎるので、早めに手を打ったということだろうか。今回の一件は、フランスがいかにデビィ政権に依存しているかを示している。