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今日のアフリカ

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ソマリアで米軍による空爆が急増

2019/02/11/Mon

8日付FDD's Long War Journalの記事によれば、トランプ政権下で米国によるソマリアへの空爆が急増している。アルシャバブを標的としたもので、1月には100人以上の戦闘員が殺害され、これまでで最大の数だという。オバマ政権下においては、米軍が本格的に介入した紛争地域以外での空爆は複数の省庁による協議が必要とされ、米国にとって「継続的かつ喫緊の脅威」が認められる場合にのみ許可された。しかし、トランプ政権下この方針は転換され、空爆の頻度は急増した。オバマ政権期には数少ない回数の爆撃でアルシャバブ幹部の殺害を狙ったが、トランプ政権になって攻撃対象は一般兵士にも広がった。空爆は2015年まで年間3回以下だったが、2016年に15回と急増し、17年に31回、18年には47回に増えた。今年に入って2月8日までに14回の空爆が行われている。
 アルシャバブは2011年に首都モガジシオの支配権を失い、軍事的には劣勢が伝えられている。しかし、今年に入ってからも、モガジシオのみならずケニアの首都ナイロビ近郊でも一般市民を狙ったテロ攻撃を行うなど、活動が鎮静化したとは言い難い。米軍の空爆によりアルシャバブ側の犠牲者は多数に上っているが、そのほとんどは一般兵士で、少し訓練すれば前線に送り出すことができる。
 米軍元幹部は、この空爆がアルシャバブの打倒を目的とするものではないと認めている。先週開かれた米国上院軍事委員会(Armed Service Committee)で、AFRICOMの元司令官 Thomas Waldhauser海軍大将は、「空爆によってアルシャバブに勝利することはできないが、ソマリア連邦政府と同国軍に治安維持任務の機会を提供できる」と述べている。空爆は、ソマリア連邦政府の治安維持能力構築のためだ、というわけである。同氏はまた、「空爆は問題を引き起こす。一方それは抑止力にもなる。どっちにどの程度の影響が出るかは、オープン・クエスチョンだ」とも述べている。
 元幹部だけに率直な発言である。しかし、例えばアフガニスタンの経験を考えても、こうした米軍の支援がソマリア連邦政府軍の能力構築に繋がるのか、大きな疑問を感じざるを得ない。空爆がアルシャバブの一般兵士に植え付ける怨恨の方が、戦闘に対する強い動機付けになるのではないだろうか。