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今日のアフリカ

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サヘル地域における気候変動と紛争の増加

2019/01/24/Thu

近年、サヘル地域における気候変動と、貧困や紛争などのさまざまな課題の関係が指摘されている。現在、サヘルの気温は世界平均の1.5倍の速度で上昇しており、不安定な降雨や雨季の縮小などの傾向がみられる。国連の報告によると、サヘル地域の農地のうち約80%において荒廃が進んでいるとされ、推定3300万人が食料不足に瀕しているとされる。生産力の低下により、農村部を中心に基本的な収入の確保ができず、医療サービスや教育サービスへのアクセスが困難な状況が生まれており、なかには武装グループへ加わる事例もみられる。

マリとニジェールにおけるコミュニティ間の衝突も、気候変動と深くかかわっていることが指摘されている。気候変動の影響下における利用可能な土地や水資源の減少は、農耕民と牧畜民のあいだの緊張を高めており、マリではコミュニティの衝突による死者数が急増している。Armed Conflict Location & Event Data Projectの調査結果によると、マリ国内の暴力による死者数は2016年は320人であったが、2017年は949人、2018年には1686人と2016年の約5倍に増加しており、この傾向は乾燥の厳しいマリ北部から中部にかけての地域と、マリ・ニジェール・ブルキナファソの国境近くの地域で顕著だとされている。

世界規模で進行している気候変動は、サヘル地域において暴力を含む多くの課題を生み出しており、解決が困難な状況となっている。各国の温暖化への対応を急ぐとともに、サヘル地域における環境保全・資源管理の体制の整備や地域間の連携を図る必要があると考えられる。