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今日のアフリカ

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米国のアフリカ新戦略

2018/12/19/Wed

12月13日、米国安全保障アドバイザーのジョン・ボルトン氏はヘリテージ財団で講演し、トランプ政権のアフリカに対する新戦略を発表した。トランプ大統領はアフリカに対して関心がないと見られていたので、アフリカを対象とした政策を打ち出したことはそれなりに意味がある。とはいえ、その中味は勇気づけられるものではない。
 ボルトン氏が強調したのは、1)アフリカとの通商関係強化、2)急進的イスラーム主義と暴力的紛争の封じ込め、そして3)効率的、効果的な支援という3点である。特徴的なのは、冷戦時代さながら、大国間の競争という観点で現状を捉えていることだ。具体的には、中国、ロシアへの対抗である。ボルトン氏によれば、両国は腐敗した手段でアフリカへの影響を強めており、アフリカの成長を阻害するとともに、米国の投資機会を奪っているという。しかしながら、中露と米国とは、アフリカへの輸出産品も投資分野も異なる。したがって、こうしたゼロサムゲーム的な認識は明らかに誤っている。
 ボルトン氏は、安全保障の分野でも効率性を重視し、効果のない国連PKOは見直すと明言した。コンゴ民主共和国、中央アフリカ、マリなどに展開しているミッションが標的となるのだろうか。これらの国々の国連PKOが問題を抱えていることは事実だが、どのような方法でそれを立て直すのかは全く述べられていない。一方で、ボルトン氏は南スーダンを名指し、腐敗した指導者に率いられており、支援を見直していると述べた。南スーダンへの圧力が強まることは確実であり、それがこの国の不安定な状況にいかなる影響を与えるのか、注目される。
 17日付のファイナンシャルタイムズ紙は、ボルトン氏の講演を批判的に紹介しながら、ポジティブな点があるとすれば、米国がアフリカに関与しなければならないという必要性に気づいたことだと述べている。しかし、その関与がもっぱら中露への対抗という観点から強められるなら、思わぬ副作用をもたらすことになるのではないか。