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今日のアフリカ

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中国企業の対アフリカ投資と官民ファンドの役割

2018/12/13/Thu

12月11日付ルモンド紙は、中国によるアフリカへの投資について興味深い動向を紹介している。アフリカ諸国の中国に対する債務が問題視されているが、その背景として融資先プロジェクトの収益性に疑問が呈されている事実がある。2017年初めに開通したジブチ・アジスアベバ間の鉄道に関して、去る9月の中国・アフリカサミットの際、エチオピア首相は建設資金のリスケジューリングを交渉した。モンバサ・ナイロビ間の鉄道に関しては、毎週8万トンの輸送量を見込んでいたが、現在のところ5千トンに過ぎない。この鉄道はウガンダまで延伸する計画があるが、中国はケニアに対して、厳密なフィージビリティスタディを実施するまで、延伸への資金出資を凍結している。
 こうした鉄道建設プロジェクトは、中国輸出入銀行が主たる資金出資者となっている。ジブチ・アジスアベバ線の場合、プロジェクト費用の7割を同行が負担した。しかし、ルモンド紙によれば、中国の対アフリカ投資を考えるうえで重要なのは、官民パートナーシップによる投資ファンドである。特に重要なものとして中国アフリカ開発基金(China Africa Development Fund:CADファンド)がある。2007年のFOCACで設立されたこのファンドの規模は、今日100億ドルに達しているといわれる。CADファンドは、インフラ、農業、メディア、航空など、アフリカ36か国の90プロジェクトに34億ドルを投資してきた。その投資収益は、鉄道に比べてずっとよい。ガーナの民間航空会社Africa World Airlinesも、この投資ファンドの支援で誕生した企業の一つである。
 中国企業にとってCADファンドのような政府系ファンドから支援を得ることは保険の意味があり、投資促進の効果がある。ルモンド紙のコラムニスト(Sébastien Le Belzic氏)は、中国・アフリカ関係を債務問題に矮小化して理解すべきではないと述べている。中国国内の投資先が飽和状態にある現在、彼らは国外に投資せざるを得ない。中国による投資はアフリカの工業化に資する可能性があると、同氏は分析している。東南アジアの急速な工業化と経済成長は、プラザ合意(1985年)以降の日本企業による投資によって支えられた。同様の事態が中国とアフリカでも生じるのだろうか。その答えは結局のところ、個々の企業やプロジェクトがどの程度の収益を確保できるかに依存するだろう。その意味では、エチオピアやケニアの鉄道プロジェクトの行方が気になるところである。