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今日のアフリカ

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南アの土地改革とトランプ氏のツイート

2018/08/24/Fri

 22日、米国のトランプ大統領は「ポンペイオ国務長官に対して、南アの土地・農場の収奪、そして農民の大量虐殺についてよく調査しろと命じたところだ。南ア政府は白人農場の土地を奪っている」とツイートした。これに対して南ア政府は即座に「わが国民の分断だけを意図し、植民地主義の過去を彷彿とさせるこの認識を全面的に拒絶する」とツイートを返した。23日南ア政府は、トランプ大統領の意図について米国大使館を通じて説明を求めることを明らかにした。
24日付ファイナンシャルタイムズ紙によれば、トランプ氏のツイートはフォックスニュースの番組で南アの土地問題が取り上げられた後になされたもので、この番組では、コメンテーター(Tucker Carlson氏)が南アがすでに土地を無償で取り上げられるよう憲法を改正した(実際にはまだ改正していない)と誤った情報を述べ、ラマポサ大統領を「レイシスト」だと発言した。
 南アの農場で白人が虐殺されているという主張は、南アの白人ナショナリストグループが繰り広げているものだが、南アの農民組織AgriSAは5月、農場での殺害件数は近年ここ20年間で最低水準にあるとの声明を出している。一方、アフリカーナーの極右グループが組織するAfriforumは、近年米国の「オルト・ライト」の活動家との関係を強化し、SNS上で"WhiteGenocide"ハッシュタグを使って南アに関する議論に参入しているという。Afriforumの指導者Kallie Kriel氏は、トランプ氏のツイートを歓迎し、フォックスニュースのコメンテーターにも謝意を表した。23日、米国国務省スポークスマンは、南アの「補償なしの土地収用」(appropriation without compensation)政策に懸念を表明している。
 一方、南アのラマポサ大統領は、23日付のファイナンシャルタイムズ紙に寄稿し、土地改革の正当性と必要性を訴えている。強調しているのは、極端な土地所有の不平等が解消せず、貧困削減が進まないために経済成長が阻害されていること、恣意的な土地所有権の剥奪を防ぐために憲法改正によって土地改革プロセスを透明化すること、未利用地や遺棄された建物、完全に投機目的の所有地など「補償なしの土地収用」ができる条件を明確化することなどで、ランドグラブではないと強く主張している。
 フォックスニュースの偏向した報道に基づくトランプ氏のツイートは、結果として南ア政府の取り組みの正当さを宣伝する結果になったように思われる。とはいえ、このツイートを受けて南アの通貨ランドは値を下げたし、ANCが進めようとしている土地改革がきわめてセンシティブな問題であることも事実である。アフリカーナーの極右とEEFのようなポピュリスト政党の間で、ラマポサ政権は難しい舵取りを迫られている。