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今日のアフリカ

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西サハラ問題

2018/06/25/Mon

西サハラの法的地位をめぐる問題は長期間にわたって出口の見えない膠着状態に置かれてきたが、近年その状況を変える可能性がある重要な動きが起こっている。2017年1月にモロッコがアフリカ連合に復帰したのはもとより重要な動きだが、6月23日付のファイナンシャルタイムズ紙は、今年に入って出された2つの裁判所の判決を取り上げている。
 第1に、2018年2月27日に欧州司法裁判所(European Court of Justice)が出した決定である。この決定は、EUとモロッコの間で結ばれた漁業協定について、それが「EUとモロッコ王国との間の関係を規定しうる一般的な国際法のルール、とりわけ自決原則に反する可能性がある」とした。すなわち、西サハラ沖で水揚げされた魚をモロッコ産として扱うことは国際法上問題があるという根本的な疑問を提示したわけである。
 第2に、同じく今年2月に出された南アフリカの裁判所による判断である。ECJの決定の数日前、南アフリカ裁判所は、西サハラから出荷されたリン鉱石の積み荷が、採掘地域に主権を有するサハラアラブ民主共和国(RASD)に帰属するとの判決を出した。このリン鉱石は、モロッコの国有リン鉱石会社OCPによる積み荷でニュージーランドに向かうところだった。
 沿岸漁業の水産物にせよ、リン鉱石にせよ、モロッコの重要な輸出産品であり、日本とも関係が深い。これら産品の取引において、RASDの存在を意識せざるを得ない状況が生まれたといえる。RASDはこれらの判決を足掛かりに外交的地位を認めさせるべく、国際社会への働き掛けを強めている。モロッコとの間で外交的綱引きが強まることになろう。