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今日のアフリカ

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ルワンダのアーセナルへの広告

2018/06/01/Fri

5月23日ルワンダの政府系新聞New Timesは、英国プレミアリーグの人気サッカーチーム「アーセナル」の観光パートナーとなり、同チームのユニフォームの袖口に"Visit Rwanda"の文字が入ると報じた。これに対して、貧困国で援助に依存するルワンダがそうした投資を行うのは馬鹿げているとの批判が英国などで起こり、日本でもその意見が報じられた(5月30日付朝日新聞)。一方、31日付ファイナンシャルタイムズでは、M. S. Webb記者名で、29日にルワンダ開発局(RDB)局長に対して批判的なインタビューを行ったBBC記者を批判するコラムが掲載された。コラムの主張は、一言で言えば、貧しいアフリカは広告費にカネを使うべきではないという理屈は誤っている、というものだ。
 この主張には説得力がある。ルワンダはここ20年ほどの間に高い成長を遂げてきた。予算の援助依存率が17%と報じられているが、2000年代初頭には50%程度であったから、大幅に下がったことになる。New Timesの記事によれば、アーセナルのパートナーになることによって、グローバルな関心をルワンダ観光業に引き付けることができるという。ルワンダは、広告料に十分見合う投資だと踏んでいるのである。紛争後のルワンダは、英国や米国との良好な外交関係を背景に、こうした国々が推進する新自由主義的な政策を実行してきた。投資環境を改善し、世銀のDoing Business指標ではアフリカでトップクラスの評価を得ている。そして、高いマクロ経済成長を達成した。ルワンダは、グローバル化の波に乗るべく努力してきたし、それによって一定の成果もあげてきた。その一方で、こうした政策によって、国内の格差が拡大したとの批判も絶えない。
 新自由主義政策によって経済成長率を高めることに成功したルワンダにとって、アーセナルに広告を出すことは、思い切った投資かも知れないが、ロジカルには特別な行動ではないだろう。それを批判的に報じたメディアの側に、アフリカは貧しくて援助に依存しているのだから、アーセナルに宣伝を出すなんておかしいという感覚があったとしたら、それこそおかしいのではないだろうか。今日のグローバル経済は、必然的にこうした投資行動に向かわせるのであり、我々もまた、その中にいる。その意味を考えるべきだろう。