4月20日付ルモンド紙は、「アフリカにおけるグローバルジハードの幻影」という興味深い記事を配信している。IRDのペルーズ・ドゥ・モンクロ(Marc-Antoine Perouse de Montclos)が執筆した論説で、サヘル地域で大規模な軍事作戦を展開するフランスの政策に再考を促す内容である。内容は概略次の通り。今日、フランスがこの地域に展開している軍事力は、アルジェリア戦争以来の規模に拡大しているが、それに対して疑問を呈する声は国内に少ない。この地域で「対テロ作戦」を実施する側は、サヘル地域に湾岸地域などから急進的なイスラームが流入し、急進化した若者がジハード組織に加わると説明するが、この説明には問題がある。宗教的な理由からジハード組織に加わる若者は、それほど多くないからだ。マリの中部、北部の場合、自分の家族やコミュニティを守るため、また自分が依存する経済活動(合法、非合法を問わず)を守るためという理由が大きい。ニジェールにおいて、ボコハラムに属していた168人の拘留者を対象に行われた調査では、活動に参加した理由として、自身が誘拐された、軍の抑圧から逃げた、政府の不正義への抗議だ、という理由が大半を占め、宗教的な要因を挙げた者は約2割にとどまった。ナイジェリアで行われた調査でも、未成年がボコハラムに加わるのは、友達に追従したため、お金を稼ぐため、社会的階梯を上昇するため、といった理由であることがわかっている。いずれの調査も、ジハード主義を掲げる組織の活動にはローカルなダイナミズムが決定的に重要なことを示す。人々が持つ不正義の感覚、社会的不平等、国軍の暴力、公共部門の汚職などが、サハラのジハード主義勢力伸長に深く関わっている。しかし、こうした説明はあまりなされない。軍事行動を正当化するために、「グローバル・ジハードの脅威」を強調する方が簡単だからである。
この論説は説得的である。サヘル地域に限らないが、軍事力だけでジハード主義勢力の活動を抑制することはできない。その活動は、現地における統治(ガバナンス)のあり方や外部からの軍事介入の反作用として、伸長、活発化している側面がある。
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フランス、サヘル、テロリズム
2018/04/21/Sat