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今日のアフリカ

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ICCがダルフール紛争の戦争犯罪容疑者を初めて拘束

2020/06/14/Sun

69日、国際刑事裁判所(International Criminal Court: ICC)はプレスリリースをとおして、ダルフール紛争の戦争犯罪容疑者、アリ・クシャイブ(本名アリ・ムハンマド・アリ・アブドゥ=アル=ラフマン)が、中央アフリカで自ら投降し、その身柄がICCに引き渡されたと発表したこれは、ダルフール紛争の戦争犯罪容疑者のなかで初めてICCに身柄を拘束された例となる。

アリ・クシャイブは、推定1957年生まれ。スーダンの西ダルフール地方におけるローカル社会の実力者であり、スーダン政府が組織した民兵組織、「大衆防衛軍(Popular Defence Forces: PDF)」に参加した。

彼は、20038月から20043月にかけて、口語アラビア語で「馬に乗る武装した男」を意味する部族民兵、「ジャンジャウィード(Janjaweed)」を率いて、スーダン政府が主導する反乱勢力鎮圧作戦に参加した。この軍事作戦は、スーダン政府軍(Sudanese Armed Forces: SAF)と、ジャンジャウィードと連携する大衆防衛軍が、ダルフールの反政府武装組織である「スーダン解放運動/軍(Sudanese Liberation Movement/Army:SLM/A)」と「正義と平等運動(Justice and Equality Movement: JEM)」に対して行ったものであり、一般にダルフール紛争と呼ばれている。ダルフール紛争は、30万人以上の犠牲者と数百万人の国内避難民を生み出し、「世界最悪の人道危機」と呼ばれている。

彼は、ジャンジャウィードのリーダーとスーダン政府との仲介役となり、兵士のリクルート、兵器、資金、食糧の提供を行っただけでなく、自ら民兵を率いて、市民の殺害、拷問、強姦、その他の犯罪行為を行ったと考えられている。ICCは、2007427日、アリ・クシャイブともう一人の容疑者に逮捕状を発出した。アリ・クシャイブについては、2003-04年に行った22件の人道に対する罪と、28件の戦争犯罪について責任が問われている。しかし、スーダンのバシール政権は、これまでICCの捜査への協力を拒否し、容疑者たちの身柄引き渡しに応じてこなかった。

610日付のSudan Tribuneによれば、スーダン政府は、ICCによるクシャイブ拘束の発表に対し、オマル・アル=バシール前スーダン大統領を含む4人の戦争犯罪容疑者についてもICCと対話の準備があるという声明を出したスーダン政府は、すでに最高評議会の高官が20202月に出した報道発表のなかで、4人の戦争犯罪容疑者のICCへの身柄引き渡しに同意すると公表しているこの身柄引き渡しは、スーダン政府とダルフールの反政府武装組織との間で行われた和平合意案のなかに含まれている。

今回のアリ・クシャイブの拘束によって、ダルフール紛争における戦争責任問題のさらなる進展が期待される。