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今日のアフリカ

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ICC無罪判決のコンゴ民主共和国への影響

2018/06/09/Sat

 6月8日、国際刑事裁判所(ICC)で元コンゴ民主共和国副大統領のJ-P. ベンバに関する上告審が行われ、無罪判決が言い渡された。ベンバは、コンゴ内戦中、反政府武装勢力MLCの指導者であったが、2002-03年に隣国中部アフリカが政治的混乱に陥った際、当時の同国大統領パタセの求めに応じて、配下の兵士を同国に派遣した。その兵士が中央アフリカで犯した暴行やレイプなど非人道的行為に対して、ICCが訴追し、ベンバは2008年にベルギーで逮捕された。配下の兵士による犯罪を問われたわけである。2016年の第一審はベンバの責任を認め、懲役18年の判決を下した。これに対してベンバ側が上告し、無罪判決が出たのである。
 ベンバの無罪判決は、ICCにとって大きな痛手だとの報道されているが、コンゴ内政に対しても甚大な影響を与えるだろう。コンゴでは2016年に任期が切れた後も、選挙が実施できないとの理由で、カビラが大統領の座にとどまり続けている。しかし、国内野党勢力や国際社会は、今年末には選挙を実施するよう強い圧力を加えている。2006年の大統領選挙の決選投票でカビラと争った実績があるベンバが無罪判決を得たことで、様々な形でコンゴ政治への関与が始まるであろう。有力な野党指導者の一人カトゥンビは、ベンバの無罪判決を歓迎し、野党勢力を強化するだろうとコメントを出した。この先、どのような形で選挙に向けたプロセスが進むのか、注目される。