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今日のアフリカ

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マリにおけるDDRプロセスの危機

2018/11/10/Sat

マリにおける和平プロセスの停滞が懸念されているが、DDR(武装解除・動員解除・再統合)に関してそれを裏付ける報道があった。11月8日付ルモンド紙によれば、DDRの一環による国軍再編の式典を、新たな部隊を構成する兵士が大量にボイコットした。6日、マリ北部のガオで開催された調整作戦メカニズム(méchanisme opérationnel de coodination: MOC)樹立式典で、MOCを構成するはずの575人の元兵士が欠席したという。内戦で敵対した武装勢力を取り込んで新たな部隊をつくり、治安維持にあたらせるという構想に暗雲が垂れ込めている。武装勢力の兵士たちが新軍への統合を拒む理由として、旧武装勢力で自分が持っていた階級を新軍でも維持できるかどうかで合意できず、また統合される人員の数でも合意ができないという。武装勢力では、大将だ、中将だという高位の職階を乱発する傾向にあるし、DDRでは手当てがもらえるので各勢力が自派の人数を水増しする傾向がある。マリでも3万6000人の元兵士が統合の意向があると伝えられているが、実際には1万6000人程度だと推測されている。
 DDRに関わるこうした報道は、デジャヴの感がある。同様の問題が、コンゴ民主共和国(DRC)東部や中央アフリカなどで伝えられている。新軍の設立が進まない根本的な理由は、治安状況が依然として悪いことだ。相互不信が強いなか、治安が悪ければ、武器を捨てるインセンティブは生まれない。それが新たな治安悪化につながるので、悪循環になって武装解除も治安の改善も生まれないのである。派遣されている国連PKOには、治安を安定化させるに足る軍事的、政治的能力がないということだろう。これも、DRCや中央アフリカと全く同じである。