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今日のアフリカ

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第8回FOCAC開催

2021/12/04/Sat

 先週、セネガルの首都ダカールで第8回中国・アフリカ協力フォーラム(FOCAC)閣僚会議が開催された。習近平主席は11月29日に開会演説をリモートで行い、総額400億ドルの資金提供と10億回分のコロナワクチン提供を発表した。600億ドルの資金提供を約束した前回(2018年)に比べれば提供資金の総額は縮小されたが、その分保健衛生部門での協力が強調されている。
 中国・アフリカ関係の専門家でCNRS名誉研究部長のティエリー・ペロー(Thierry Pairault)は、ルモンド紙とのインタビューにおいて、今回のFOCACが、中国・アフリカ双方にとって、幾分か「幻想の終焉」という雰囲気のなかで開催されると指摘した(11月26日付)。彼は概略次のように主張する。
 アフリカ側は、中国が提供する資金は高利子で返済期限が短く、開発のために限界があると考えるようになった。中国側も、「債務の罠」などの批判を受けて、アフリカへの資金貸出し審査を厳格化する方針を示している。中国のアフリカにおける資金投下の大部分はサッカー場、飛行場、道路、不動産などのインフラ、建設部門に向けられており、生産部門への資金はそれに比べればずっと少ない。アフリカにおける中国の活動の中心は、基本的に貿易と非生産部門・インフラ部門への出資である。投資への寄与は少なく、鉱業や皮革製造業など低技術産業が中心であって、技術移転は乏しい。中国にとってアフリカの経済的優先度は低く、アフリカの資源にも依存していない。アフリカとの関係はもっぱら政治的動機に基づいており、FAO(国連食糧農業機関)、UNIDO(国連工業開発機関)、ITU(国際電気通信連合)、ICAO(国際民間航空機関)という4つの国連機関のトップを中国が握っているのは、アフリカの支持があったからこそだ。
 今回のFOCACでは、資金提供こそ前回の600億ドルから400億ドルへと縮小したが、無償供与(6億回分)と現地生産(4億回分)を通じて、新型コロナウイルスのワクチンをアフリカ諸国に提供することが約束された。400億ドルの内訳は、貿易融資、中国企業による投資、アフリカの金融機関への資金提供、IMF特別引き出し権(SDR)割当てのそれぞれに100億ドルとなっている(習近平主席演説)。中国製ワクチンのアフリカでの現地生産は、近々エジプトで開始される。アフリカでワクチン接種が著しく遅れている現状を考えれば、アフリカ諸国には歓迎されることだろう。アフリカ諸国からの債務救済の要請が強まるなかで、保健衛生部門の協力に重点をシフトしたとの指摘もある(1日付ルモンド)。外交であるから、中国側に政治的意図があることは疑いないが、アフリカ諸国のニーズを汲んでうまく対応しているという印象を与える。