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今日のアフリカ

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エチオピア

2018/02/28/Wed

【エチオピア現地報告2(松波康男特任研究員)】
今月17日、国防大臣は会見を開き、今般の国家非常事態宣言に6か月の期限を定めつつ、同宣言の履行に際してコマンド・ポスト(command post)を全国各所に展開する旨を発表した。コマンド・ポストとは、連邦政府から派遣される軍司令部を指しており、令状無しに「被疑者」を拘束する権限を有している他、通信の遮断・妨害を行うことも可能となっている。また、市民の街頭デモ実施並びに組織形成及び集団移動禁止といった諸措置もコマンド・ポストが主として担う。
同会見の翌日から、報告者は、自身の調査地の一つであるオロミア州A村を訪問した。アディスアベバから州都アダマを経由してA村に入ったが、道中、集会や検問等に遭遇することなく順調に移動できた。なお、移動時の安全確保については、日本大使館の安全情報を参考にしつつ、大学関係者や同村の知人らに事前確認するなどして万全を期した。
A村で住民と話しをすると、同村はここのところ平穏だが、近隣他村で先週まで、政府治安部隊らの通行を妨げる道路封鎖が行われていたことがわかった。このあたりの住民のなかには、「親族・友人らが不当に逮捕されて未だ拘束されている」と不満を募らせるものが多数おり、先日のオロモ人指導者解放の祝賀集会でさらなる逮捕者が出たことを契機に、そのような抗政府活動が行われていたと言う。
また、A村住民によると、一昨年10月発出の非常事態宣言下では、多くの逮捕・拘束者が同村からも出たという。その際、兵士から「OLF(オロモ解放戦線)を支援している」と一方的に告げられ、釈明の余地なく力づくで連行されたという。一晩のうちに、村住民おおよそ80名が拘束されたこともあったという(OLFとは「テロ組織」とエチオピア政府が呼ぶ反政府組織)。当時拘束された住民の話によると、連行後の様子は以下のとおりである:「ピックアップ・トラックに乗せられて郡庁近くの警察所まで運ばれた。すでに多くの逮捕者が集まっていた。200名を下らなかっただろう。その晩に郡内各所から連行されてきたようだった。警察署の収容人数を超えていたため、多くが敷地外の空き地に留め置かれた。翌朝、老人らが解放されるなどの調整があった。(自分は、)容疑がはれて解放されるまでに4ヶ月を要した。アダマの留置所には9千人超が収容されているとの噂もそこで聞いた。」
このA村での集団逮捕を率いたのは、当時、同郡に配置されていたコマンド・ポストであった。平時は、A村の治安維持は主としてオロミア州警察が担う。他方、非常事態宣言下では、連邦政府から派遣されるコマンド・ポストが、州をバイパスする仕方で上述のような「治安措置」をとっていたのであった。 非常事態宣言が解除されて以降、コマンド・ポストはA村から撤退したものの、今般発出された同宣言によって、コマンド・ポストが近日中に同郡へ配置されることも人々に噂されている。