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今日のアフリカ

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ナミビア大統領の死と平穏な権力移行

2024/02/05/Mon

 ナミビアのハーゲ・ガインゴブ大統領が2月4日未明に首都ウィントフックの病院で亡くなった。死因は明らかにされていないが、1月の定期健診でがんの診断を受け、治療中だった。82歳だった。

 ガインゴブ氏は1990年のナミビア独立時に初代首相に就任し、2014年に第3代大統領に当選した。2019年に再選し、今年が任期の最終年だった。大統領に選出される前から健康問題を抱えており、2013年には脳の手術を受け、翌年には前立腺がんを克服したことを公表していた。昨年2023年も大動脈の手術を受けていた。

 今年11月に予定されている大統領選挙までムブンバ副大統領が暫定大統領として執務を代行する。ムブンバ氏は、ガインゴブ氏の死後わずか15時間後にウィントフックの庁舎で行われた宣誓式で、「責任の重さを認識しながら、この重いマントを引き受ける」と述べている。そして「年末に予定されている選挙に出馬する予定はない」と述べ、「私はナミビアの人びとが短期間ではあるが、私に大統領としての栄誉を与えてくれたことに感謝しなければならない」と語っている(2月4日付ナミビア国営放送)。

 現ナミビア憲法では大統領の任期は最大2期までと定められており、政権与党の南西アフリカ人民機構(SWAPO)は、昨年2023年初めに大統領候補としてナンディ=ンダイトワ氏を指名していた。彼女はムブンバ氏の後任として副大統領に就任した。大統領選挙で当選すればナミビア初の女性大統領となる。

 独立以来権力を握ってきたSWAPOは、ガインゴブ氏在任中に、複数の大臣が辞任に至った贈収賄事件をはじめ多くのスキャンダルに直面してきた。独立世論調査機関アフロバロメーターによれば、国が間違った方向に進んでいると考える人が、2021年には国民の4分の3を占め、その数は2014年から3倍に増加したという(2月4日付BBC)。

 ただ、大統領死去のニュースが4日朝からかけめぐったナミビアでは目立った暴動は報告されておらず、平穏に権力が移行したことは記すべきことであろう。今後の大統領選挙に向けた動きについては、引き続き注視していく必要があるだろう。

(宮本佳和)