昨年12月26~28日ルモンド紙は、アフリカ諸国におけるドローン使用について、3回にわたる特集記事を組んだ。重要な内容なので、概略を報告する。
12月5日、ナイジェリアのカドゥナ州で、イスラームの祝祭のために集まっていた村人を国軍のドローンが誤爆し、85人が死亡するという痛ましい事件が起きた。Human Rights Watchは、2017年以来、ナイジェリアで300人以上が、ドローンの誤爆によって犠牲になったとしている。この背景には,イスラム急進主義勢力への攻撃などのために、国軍がドローンの使用を拡大させている事実がある。これはナイジェリアに限った話ではなく、アフリカでは過去5年間に20ヵ国以上がUAV(Unmanned Aerial Vehicle)を導入している。特に、北アフリカ、サヘル諸国が軍事目的で導入するケースが目立つ。
内戦の中で2021年末に反政府勢力が首都アジスアベバに迫った時、エチオピア政府はトルコ、イラン、中国からドローンを購入し、撃退に成功した。エチオピアの成功を見て、西アフリカ諸国がドローン導入を決めたという。マリやブルキナファソは、フランス軍を撤退させた後、トルコ製UAVのBayraktar TB2を導入した。11月14日の北部キダル奪還に際しても、マリ軍はUAVを多用したと報じられた。国連特使によれば、リビア内戦は、世界一多くのドローンが使われた戦争だという。このようなドローンの使用拡大に伴って、市民の被害も拡大している。
UAVの主要輸出国として、トルコがある。2019年以来、トルコは40機以上のUAVをアフリカに売却したと言われる。ニジェール、ブルキナファソ、マリは、過去1年足らずのうちに、Bayraktar TB2の多様なモデルを購入した。セネガルやチャドもトルコ製UAVを導入したという。その他、中国やイスラエルもUAVを輸出している。コンゴ民主共和国は、中国製のUAVをルワンダ国境に配備した。イランやUAEもアフリカ諸国にドローンを提供している。
UAVの価格は、戦闘機の20分の1と言われる。Bayraktar TB2のような中距離用の場合は200~2000万ユーロ、航続距離が短い、偵察用のクラスI~IIの場合は100万ユーロ以下で購入できる。トルコ製や中国製のMALEは300万ユーロ以下で、米国製の6分の1の価格である。
アフリカ諸国もUAV製造に着手している。最近、南アフリカがアフリカで初めて自国製MALE(Milkor 380)を製造した。エジプトも自国製UAVを製造し、ロシアの協力を得て防衛システムを開発中である。モロッコは、イスラエル製ドローンの組み立て工場を国内に2つ建設した。ナイジェリアも自国産ドローン製造プログラムを開始した。
他方、イスラム急進主義勢力も、ドローンを使用し始めている。2020年1月5日、ソマリアのアルシャバブが、ケニア・ソマリア国境付近の米軍・ケニア軍合同基地を攻撃し、米兵3名が死亡した。この攻撃は偵察用ドローンで収集した情報をもとに計画されたもので、イスラム急進主義勢力側がUAVを初めての事例とされる。現在まで、こうした武装組織による攻撃用UAVの使用は報告されていないが、そうした事態が起こるのは時間の問題だとの意見もある。現在既に、インターネットでドローンを購入できるし、それを改造して爆薬を搭載させることは、金銭的にも、技術的にも、それほど難しくない。
紛争におけるドローンの利用は、既に急速に拡大しつつあり、この趨勢は継続するだろう。テクノロジーが紛争の様相を変えている。新たな脅威を認識し、対策のために何らかの共同行動を起こす必要がある。
(武内進一)