6日、ソマリアのハッサン・シェイク・モハムッド大統領は、今月1日にエチオピアがソマリランドの間で結んだ協定を違法だとして無効にする法律を制定した(8日付ルモンド)。1日の協定とは、ソマリランドがベルベラ港の使用をエチオピアに認めるというもので、エチオピアは将来的なソマリランドの承認に含みを持たせた。
ソマリランドは、ソマリア内戦のなか、1991年に独立を宣言した。人口は約450万人。政治情勢は比較的落ち着いているが、未だどの国からも承認されていない。ソマリアが主権を侵害されたと怒るのは当然である。
12月末、ソマリア政府とソマリランドとは、ジブチのゲレー大統領の仲介の下で会談すると発表していた(1月2日付ルモンド)。これは、2020年に会談が失敗して以来の動きで、ソマリア政府もソマリランドとの関係再構築に向けて動こうとしていたようだ。
昨年来、海洋への出口を求めるエチオピアの動きが目立っている。昨年7月、アビィ首相は演説で「エチオピアは世界最大の内陸国であり、平和的な方法で港を求めるが、それができないときは力を用いる」と述べた(2023年11月8日付BBC)。また、10月13日には、議会での演説の中で、首相は、海への出口はエチオピアの「自然な権利」であり、エチオピアは「地理的な囚人だ」と述べた。これは、ソマリア、ジブチ、エリトリアへの圧力と受け取られるもので、特にエリトリアの関係悪化が懸念された(11月9日付ルモンド)。
エチオピアの動きに対して、米国、EU、英国、AU、アラブ連盟、そしてエジプトやトルコも、ソマリアの主権を尊重するよう求めている。主権尊重は国際社会の最も基本的なルールだから、この対応は当然である。何らかのプラクティカルな解決法が必要だし可能と思われるが、エチオピアの突飛な動きの背景に何があるかを知ることが重要だ。
(武内進一)