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今日のアフリカ

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コンゴの大統領選挙

2023/12/23/Sat

 12月20日、コンゴ民主共和国で大統領選挙を含む総選挙が実施された。日本の6倍以上の巨大な国で、有権者数は4400万人、投票所は7万5000ヵ所を数える。20日の選挙では、予想どおり、相当の混乱が生じた。投票用機材搬入の遅れから投票開始時刻が大幅にずれ込んだり、停電等のトラブルのために投票用機器が動かなかったり、多くのトラブルが報告されている(21日付ルモンド)。投票は、21日も継続して行われた。
 今回の選挙では、現職のチセケディが再選を果たすかが最大の注目点である。選挙が1回しか行われず(決選投票がない)、野党候補が統一されていない状況では、チセケディの優勢は動かない。前回の選挙では、前大統領カビラに近い人物で占められた選挙管理委員会が投票を操作し、チセケディを勝利させたというのが定説だが、今回はそうしたどんでん返しは考えにくい。多少のトラブルはあっても、チセケディの再選が発表される可能性が高い。
 選挙戦の中で、チセケディはナショナリスティックな論理を多用した。有力な野党候補のカトゥンビについて、「外国から送り込まれた候補者であり、ルワンダとつながっている」と主張した(17日付ルモンド)。また、選挙戦の締めくくりにキンシャサで行われた集会では、「ルワンダが無責任な態度を続けるなら、戦争も辞さない」と発言した(19日付ARIB)。実際、コンゴは中国から攻撃・偵察用戦闘機を購入し、ルワンダ国境に近い南キヴ州に配備している(20日付ルモンド)。
 チセケディ政権の下で、コンゴのマクロ経済は成長を続けている。コンゴ産鉱物資源への高い需要を考えれば、経済成長はこれからも継続するだろう。これは政権にとっての追い風だが、経済の成長はルワンダとの緊張をいっそう強める可能性がある。その意味で、不安定性や脆弱性を抱え込んだ成長である。
(武内進一)