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今日のアフリカ

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ガボン―新政権の周辺国外交

2023/10/21/Sat

 8月30日のクーデタでガボンに軍事政権が誕生したが、そのトップであるオリギ=ンゲマが、活発な周辺諸国外交を見せている。早くも9月19日に赤道ギニアの首都マレボを訪問し、10月1日にはコンゴ共和国、12日にはコンゴ民主共和国、16日にはルワンダを訪れ、それぞれ首脳と会談した。
 訪問先は、いずれも地域機構の「中部アフリカ経済共同体」(ECCAS)加盟国である。アフリカでクーデタが起きると、AU(アフリカ連合)やECOWAS(西アフリカ経済共同体)といった地域機構が、当該国を資格停止処分にすることが普通であり、ECOWASのように厳しい制裁を科すこともある。ガボンもクーデタ後、AUから8月31日、ECCASから9月4日に資格停止処分を受けた。オリギ=ンゲマはECCAS首脳と会談し、早期の正式メンバー復帰を訴えたものと思われる。
 一方で、クーデタから間がないにもかかわらず、周辺国を頻繁に訪問するオリギ=ンゲマの姿勢から、ガボンの軍事政権が国内的には一応の安定を確保していることがわかる。訪問を受け入れた周辺国も、ガボン新政権に厳しく対応してはいない。コンゴ共和国を訪問した際には、コンゴのガコソ(Jean-Claude Gakosso)外相が記者会見し、「流血がなかったのは重要なことだ。住民が歓喜しているのも見た」とポジティブなコメントを述べた(10月2日付ルモンド)。
 ガボンの軍事政権は民政移管までのプロセスをまだ明らかにしていないが、周辺諸国首脳に説明をしにいったのであろう。民政移管プロセスに周辺国の理解が得られれば、比較的早期に国際的な舞台に復帰できるだろう。
 補足だが、オリギ=ンゲマがコンゴ共和国を訪れた際には、アリ・ボンゴの父オマール・ボンゴとその妻エディット・ルーシーの息子(オマール・ドゥニ・ジュニア・ボンゴ)が、根回しで重要な役割を果たした。エディット・ルーシーはコンゴ共和国大統領サスー=ンゲソの長女で、医学を学んでいたが、1989年にオマール・ボンゴのもとに嫁いだ。彼女は、2009年に45歳の若さで他界し、3ヶ月後にオマールもその後を追った。今回、オリギ=ンゲマは、エディット・ルーシーの墓参りをしたと報じられている(10月2日付ルモンド)。
(武内進一)